CES2011 − Connected TVとタブレット

正月早々、毎年恒例のConsumer Electronics Show (CES) が1/6-9にかけて、ラスベガスで開催された。入場者数は昨年からさらに増え、14万人くらいになった模様だ。景気も大分回復してきた、というところだろう。

今年のCESにもたくさんの製品が展示されていたが、特に目にとまったのは、「Connected TV」(つながるテレビ)と「タブレット」だ。昨年もCESのことをこのコラムで書いたが、このときのタイトルは、「進化するテレビ」だった。そこにあったのは、3Dテレビ、高画質テレビ、省電力テレビ、そしてインターネットに接続するテレビだった。昨年は、そのうち、3Dテレビが大きな焦点となっており、3Dテレビを前面に押し出した展示が大変多かった。

ところが2010年の3Dテレビは、年の前半は話題をさらったものの、途中から3Dテレビへの注目が薄れ、結果としては、それほど大きなビジネスにならなかった。3Dコンテンツ不足、HDテレビを買ったばかりで買い替え需要が少なかった、メガネをかけてテレビを見ることへの抵抗、健康に対する不安、等、いろいろなことが原因として挙げられているが、ともかく3Dテレビが話題の中心からはずれたことは確かだ。

そこで、今年のCESでのテレビの話題の中心は、つながるテレビに移った。ただ、一部の日本メーカーはまだ3Dテレビへのこだわりが強く、市場の状況からは、ちょっとずれているようにも感じられた。

つながるテレビとは、インターネットとのつながりだが、単純にインターネットとつながり、テレビでもウェブを検索できる、という話だけではない。これまでも、テレビからインターネットにつなぎ、ニュースや天気予報を見たり、YouTube、FacebookやTwitterのSNS等なども出来るようになってきていた。これに対し、最近の大きな変化は、インターネット経由でテレビ番組をオンデマンドで、あるいはテレビ放送でやっていないスポーツを生中継で見られるようになったことだろう。これによって、テレビの見方が大きく変わってきた。

このテレビ番組をインターネット経由で見られることについては、すでに何回か書いたが、最近では、OTT(Over-The-Top)という言葉が使われる場合が多い。そして、ケーブルテレビや衛星テレビが、契約者に対して実施しているOTTがTVE(TV Everywhere)だ。CESで特に注目されるのは、ケーブルテレビ会社とテレビメーカーがパートナーシップを結び、ケーブルのセットトップボックスなしで、テレビ番組を見られるようにしたものが出てきたことだ。これにより、ケーブルテレビ会社は、実施しようと思えば、自分のケーブルサービス提供地域外でも、インターネット経由でサービスを提供できるようになる。また、放送時間スケジュールにそった番組提供とインターネット経由によるオンデマンドによる番組提供のハイブリッド・サービスも実験が始まっている。

テレビでは、通常、パソコンのようなキーボードがついていないので、簡単に操作できるよう、これらのインターネット経由で番組を配信している放送局などを、スマートフォンやタブレットなどでおなじみのapplication(app)にしている。実は以前からテレビでも同じようなものをウィジェットと言っていたが、今は、applicationと言っている。その数は、スマートフォンなどの数十万には遠く及ばないが、数百あるメーカーも出てきている。

ただ、今回のCESで目玉になるはずだった、Google TV(Googleのソフトウェアを使ったテレビ)は蚊帳の外だ。Google TVを使ったテレビを前面に出しているメーカーもあったが、Google TVでは、インターネットで見られるテレビ番組がシャットアウトされているため、見ることができず、Google TVの価値がほとんどないからだ。これは、テレビ局など、コンテンツの権利を持っている人たちが、Google TVによって、何の契約もなく無料でユーザーがテレビ上で番組を見るのを嫌ったからだ。いづれは契約関係がクリアされ、Google TVでもテレビ番組がインターネット経由でも見られるようになるだろうが、しばらく時間がかかりそうで、Googleは戦略の立て直しを迫られている格好だ。Google TVで使っている、小型フルキーボードも、テレビを簡単に操作したいというユーザーからの評判は、あまりよくない。やはりテレビは、スマートフォンやタブレットのように、applicationを操作するような形式が向いているのかもしれない。

CESでもうひとつ注目されたのが、タブレットだ。2010年春にAppleから発売されたiPadが予想以上に売れ、他社がこのCESにタイミングを合わせ、新しいタブレットをたくさん出してきたからだ。GoogleのAndroid OSを使ったものも登場し、いよいよ本格的なタブレット市場での競争が始まった。タブレットは、大きさ的にビデオコンテンツも快適に見られるので、インターネットによるビデオ配信をさらに加速するだろう。

このタブレットとテレビをつなげる機能も、注目すべきもののひとつだ。タブレットが、テレビのリモート(分身)になることができるからだ。これは、単なるテレビのリモコン機能だけではない。タブレットもインターネットにつながっており、さらにビデオコンテンツを表示できることから、たとえば、いくつかのテレビ番組をタブレット上に表示し、その中からテレビ画面で見たいものを選び、他はタブレット上で見ることもできる。インターネットでは、スポーツ番組などで、複数のカメラアングルを提供するものもあるので、いくつかのカメラアングルをタブレット上に表示しておき、自分がテレビのディレクターになったような気分で、その中からテレビ画面に出すものを選ぶこともできる。また、テレビを見ながら、タブレットでSNSのチャットをすることもできる。つながるテレビが、タブレットとつながって、さらに進化していく。

テレビはこのように進化し、タブレットを含め、いろいろなものにつながっていく。一方、Microsoft Xboxなど、ゲーム機なども、テレビに接続し、昨年登場したKinect機能を利用して、手によるジェスチャー操作などで、テレビの外からテレビ画面をコントロールすることを狙っている。テレビが進化していろいろな機能を持つものに発展するか、あるいは、多くの機能はテレビの外におかれ、テレビは単なるディスプレイ装置になってしまうか。テレビメーカーと他のメーカーの競争は、これから激しくなるばかりだ。

(02/01/2011)


メディア通信トップページに戻る