インターネット・ポータル

インターネット・ポータルがホットだ。ポータルとは、入口とかゲートウェーのような意味で、インターネットを利用する人々がまずどこから入ってくるか、つまりどのホームページから入ってくるか、その最初に入って来るホームページがインターネット・ポータルである。

具体的に言うと、英語の世界では、Yahoo、Excite、Lycos、NetscapeのNetCenterなどがそれにあたる。Yahooを例にとって考えて見ると、最初は単なる世界中のホームページの索引のようなものであったが、その後、キーワードで情報を検索するサーチエンジンが加わり、インターネット上で情報を探そうと思えば、ここへ来ればそれが簡単に出来るようになった。

また、単なる情報を探すための索引とサーチ機能からさらに拡大し、人々が知りたい情報そのものをYahooの中で持つようになってきた。最新のニュース、天気、株価情報など幅広くYahoo(もちろん最初のページだけではなく、それにつながる多数のページ)の中で見つけることが出来、多くの場合、そこだけで事が足りてしまうようになってきた。Yahooに限らず、このような多種多様な機能およびコンテンツを加えるため、これらインターネット・ポータル企業およびそれを目指している企業は、すべてを自社開発するのではなく、先行している他のベンチャー企業を買収するという形でいち早くポータル同士の中で、優位に立とうとしている。

では一体何故このポータルが重要なのか。インターネットを使ったビジネスは色々な形で発展してきているが、その中の一つに、出来るだけ多くの人をそのホームページに集め、そこに広告を出してもらってその広告収入で利益を上げようというビジネスモデルがある。テレビも視聴率が高ければ高い広告料がとれるのと同じ仕組みである。ポータルになるということは、まさにこのビジネスモデルそのものである。

インターネットの場合は、広告料にとどまらない。例えば、人の多く集まるところであるから、そこで売りたいもの、買いたいもののオークションをやれば、沢山の人が参加するだろう。オークションの主催者は、通常その売買代金の一部を手数料として取ることになるので、手数料収入が加わる。このような手数料は、色々なものについて取ることが出来る。人さえ集まればこのようなビジネスチャンスはまだまだいくらでも広がるであろう。

ちょっと話はそれるが、既に何回かインターネット・コマース(インターネットを使ったエレクトロニック・コマース)が今、急激に発展してきているということをレポートした。インターネット・コマースには、個別の企業がそのホームページで物を売る場合と、多数の仮想商店が集まったエレクトロニック・モールを形成する2つのタイプがあるが、消費者向けのインターネット・コマースを考えた場合、成功しているほとんどのものは、個別企業によるものである。逆にエレクトロニック・モール・タイプのものは、IBMをはじめ、撤退組が多い。

これは、例えば“本を買いたい”という目的があると、例えば、Amazon.comに行くということはするが、特に目的もなく何があるかわからないエレクトロニック・モールに行くという行動を消費者があまりしなかったからである。インターネットの世界ではなく、現実の(物理的な)世界でも、遠くはなれたところにショッピング・モールを作っても、一度くらいは行ってみても、とくにそこに行かなければ買えない、そこに行けば安い、など、何か理由がなければわざわざ行かないのが現実である。インターネットの世界でもこれは同じだということである。もちろん、インターネットの場合は、遠くはなれたショッピング・モールと違い、エレクトロニック・モールに行くのに時間はかからない。クリック1つ(One click away)である。しかし、この“わざわざ”行くという意識に変わりはなく、それを消費者がしなかったために、今までのエレクトロニック・モールは成功しなかったのではないかと思う。

4年ほど前に私が“インターネット・ワールド”(丸善ライブラリー)を出版したときには、既に世の中で名前の知られている企業は自社のホームページを使ってインターネット上で商品を販売できるであろうが、そうでない小さな会社は、信用もなく、むしろエレクトロニック・モールでの販売のほうが、人も集まり、成功の可能性が高いのではないかと思っていた。しかし残念ながらこれらのエレクトロニック・モールも、人を集めることに成功しなかったのである。

話をポータルに戻すと、ポータルには既に人が集まっている。この既に人の集まっているところにあるお店には、人が目を付ける可能性がある。なぜなら、エレクトロニック・モールの問題点は、人が“わざわざ”そこに行かなかったのが一番大きな問題であったわけで、ポータルの場合は、すでに人が集まっているので、この問題が解決されているからである。つまり、ポータルはインターネットという仮想空間の一等地を形成しているわけである。

インターネットのここ4ー5年の飛躍的な発展はいまだかつて例を見ないものであるが、インターネットにより変わるであろう世界の大きな変化を考えると、まだほんの一歩を歩み出しただけであるというのは、衆目の一致するところである。それを考えると、そのインターネット仮想空間の一等地を誰がとるかは、将来どんなビジネスをする上でも極めて大きな意味があるといえる。

先日、シリコンバレーのある起業家の講演を聞いていたら、彼はYahooが会社を起こす時に社長を選ぶインタビューに来ないかと言われたが、その時はYahooはインターネットの索引にすぎず、その将来の可能性が十分に見えず、家からも遠かったので、断わってしまい大変残念なことをしたと言っていたが、社長になるという話が来なくても、Yahooの株式が公開された時点でその将来性が見えていれば、その株を買うことは出来たはずである。今はポータルの重要性が幅広く理解されてきたので、ポータルをめざす企業も多く、Yahooの株がこれから先もどんどん伸びて行くかどうかは何ともいえないが、公開時点で株を買っていれば、今それを売っても、既に何倍にもなっているはずである。

ポータルについては、最近さらに別な動きが起こっている。それは、このポータルという概念を社内のイントラネットに応用し、社員が必要な情報をうまくまとめた社内用のポータルサイトを作ろうという動きである。イントラネット用のホームページはもともとそのような思想で設計されていたと思うが、それにさらに外部情報などを加えて、より使いやすいものにしようというわけである。そのためのポータル作成ソフトウェア・ツールなども市場に出始めている。ポータルの今後には多いに注目したい。

(3/1/99)


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