大きな期待がかかる新しいウェブ・サービスの動き

米国ではここ1年余り、ウェブ・サービス(Web Services) が大きな話題である。ウェブ・サービスとは、簡単に言うと、インターネットのウェブ技術を使って、アプリケーションをサービスとして提供しようというものである。これまでのインターネットでは、ブラウザーを使って、いろいろなインターネット上の情報を自分で検索し、入手してきたが、それをさらに発展させ、アプリケーション・サービスを提供するのが、ウェブ・サービスである。

ウェブ・サービスの重要な点は、これらのサービスを行うために、標準的な手順を決めて行うという点である。具体的に言うと、以下のような標準が使用される。
* データ・インテグレーションのためのExtensible Markup Language (XML)
* メッセージングのためのSimple Object Access Protocol (SOAP)
* プログラム機能を記述するWeb Services Description Language (WSDL)
* ディレクトリー検索のためのUniversal Description, Discovery, and Integration (UDDI)

これらの標準化により、いろいろなサービスが標準的なやりとりで受けられることになる。これが実現すると、インターネット上で提供される、単なる情報だけでない、サービスが飛躍的に広がる可能性がある。

ウェブ・サービスという言葉は、日本でもソフトウェア開発等に携わる人達には、すでによく知られているが、一般の人達には、何となくわかったような、わからないようなものに思えるかもしれない。実際、ウェブ・サービスは、幅広いものであり、人によって、何をウェブ・サービスと呼ぶかが異なる場合もある。

いくつかの例を挙げてみよう。一般の人達にわかりやすいのは、自分でウェブの中から一生懸命情報を探したりするのではなく、あるサービスを受けることが考えられる。例えば、ある人が旅行をする場合、その人が旅行の目的、行きたいところ、いつ頃行きたいか、等を入れると、ウェブ上の旅行サービスが、いろいろなウェブ・サイトを探して回り、希望にあったものをいくつか選んでくるというようなサービスが考えられる。同様に、単に旅行だけではなく、いろいろなことを自分の秘書のように手伝ってくれるサービスも考えられる。また、自分からアクションを起こさなくても、事前に条件を設定しておくと、その条件が成立したとき、知らせてもらうこともできる。このように、ウェブを使って、いろいろなアプリケーション・サービスをしてもらえるのが、ウェブ・サービスである。

また、別な形のウェブ・サービスとしては、ソフトウェア利用を、契約によって、必要に応じて使う形態、例えば、MicrosoftのWordというソフトウェアを買って自分のパソコンに入れて使うのではなく、必要に応じてインターネット上から使うというやり方も、ウェブ・サービスの一つの形である。

一般ユーザー向けには、以上のような例がわかりやすいと思うが、実はウェブ・サービスは、このようなものだけではない。企業内でもいろいろなアプリケーションが使われているわけだが、それらをスムーズに統合し、使えるようにすることにもウェブ・サービスが利用できる。また、企業間でいろいろな情報を交換する場合にも、ウェブ・サービスが大いに利用できる。

会社内でいろいろなアプリケーション開発をする場合、大きな問題となるのが、複数のアプリケーションをインテグレーションし、お互いがうまく動作するようにすることである。ある人によると、アプリケーション開発に1ドルかかるとすると、アプリケーションのインテグレーションには、7ドルかかるとまで言われている。これまでも、Enterprise Application Integration (EAI) と呼ばれるソフトウェア群が存在し、アプリケーション・インテグレーション作業の緩和に貢献していた。ここにウェブ・サービス技術を導入し、お互いのアプリケーションのインターフェースを標準化することにより、このアプリケーション・インテグレーションが飛躍的に簡単になる。

企業間のやりとりでも、それぞれの業種、アプリケーションで、必要な標準化がなされれば、アプリケーション開発も大幅に簡単になり、インターネットを使った企業間のやり取りは、さらに飛躍的に広がる。最初に述べたXMLなどは、標準仕様のベースではあるものの、さらにそれを業種、アプリケーションでどのように使っていくか、標準化作業が進められなければならない。

では、いまウェブ・サービスは、どこまで進んでいるのだろうか。標準化の面でいくと、XML、SOAP等を標準に使うというところまでは決まっているものの、まだすべての業種、アプリケーションでどのような標準にするか、というところまでは、決まっていない。

どのようなアプリケーションでウェブ・サービスがすでに使われているかという点でいうと、最初に述べた一般消費者向けのウェブ・サービスは、まだこれからというところである。これは、世の中全体での標準化が進まないと、実現できないことにもよる。そういう意味で、企業内のアプリケーション・インテグレーションを含む利用が、現在のところウェブ・サービス利用の中心である。例えば、自動車メーカーのGeneral Motors (GM)では、社内アプリケーションにウェブ・サービスをどんどん導入しようとしている。

複数企業をまたいだウェブ・サービス利用が、これに続く。単にインターネット経由でXMLを使った企業間通信というレベルのものまで含めると、ウェブ・サービスは、かなり浸透してきていると言える。しかし、クリアすべき問題として、セキュリティの問題、そして、インターネットの信頼性(パフォーマンスや、ダウンしないかどうかという意味で)の問題があり、取り組みに慎重な企業もある。

一方、ソフトウェア・メーカーは、ウェブ・サービス分野での主導権を握ろうと、活発に動いている。一番熱心なのは、Microsoftであろう。Microsoftのドットネット(.Net)構想は、ウェブ・サービスのためのアーキテクチャーを作り、標準化をリードしようとしている。これに対し、Sun MicrosystemsはSunONE構想で対抗している。また、IBM、BEA Systems、Oracle、SAPなど大手ソフトウェア各社も、ウェブ・サービスのためのツール等の整備に熱心である。もちろん、ウェブ・サービスは新しい分野であるから、ベンチャー企業もいろいろなツール等で市場参入しているが、この分野に関しては、むしろ大手ソフトウェア会社の動きが目立っている。

一般ユーザー向けのウェブ・サービスは、さきほど述べたように、まだちょっと先ではあるが、いづれその分野にもウェブ・サービスが広がってくるであろうし、あらゆる業界の企業にとって、大きなビジネス機会となるであろう。直近では、企業にとって、企業内システムでの利用、また企業間取引への利用は、システム開発の効率化、スピードアップに大いに役立つことは間違いない。

今は主に大手ソフトウェア会社の動きが目立つウェブ・サービスであるが、先進的な企業は既にウェブ・サービスをどんどん取り入れており、これから多くの企業にとって、注目し、早期に対応する必要のあるものであることを、忘れてはならない。

(02-4-1)


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