カスタマー・リレーションシップ・マネジメント(CRM)

カスタマー・リレーションシップ・マネジメント(CRM:Customer Relationship Management)という言葉は、日本でもぼちぼち使われ始めているので知っている方もいると思うが、いわゆる顧客との関係をうまく管理することであり、そのためのソフトウェアが最近注目されてきている。いままで、この分野では、ヘルプデスク・ソフトウェアといわれているものが色々あり、顧客からの製品や技術的なことに関する質問に効率よく対応するための機能を色々含んでいた。また、これとは別に、セールス・フォース・オートメーション(SFA)と呼ばれるソフトウェア群があり、これらは、セールスのフェーズにおいて、セールスマンの活動を色々な面で支援するためのものであった。

ヘルプデスク・ソフトウェアは、それなりに成果を上げていたが、SFAソフトウェアは、その投資に対する効果が今一つ明確に現れず、市場が思ったほどの広がりを見せていなかった。そこで、もともとヘルプデスクもSFAも同じ顧客に対する活動を支援するものであるということから、これらを統合する動きがここ数年起こり、これがCRMへの一つの流れとなっている。

また、ここ5-10年にわたり、企業は社内の業務効率化のためにビジネス・プロセス・リエンジニアリング(BPR)を実施し、その結果として、多くの場合、Enterprise Resource Planning(ERP)と呼ばれるソフトウェアを導入し、これが業務効率化に大きく貢献している。しかし、ERPは会計管理、生産管理、販売管理、人事管理など、社内的な内部処理に関するバックオフィス的なアプリケーションが中心であった。そこで、その次のステップとして、自然な流れとしてフロントオフィス、つまり顧客との関連についてのアプリケーションに注目が移ってきたわけである。

ソフトウェア・メーカーの動きも、これに合わせてヘルプデスク・ソフトウェアとSFAソフトウェアの会社が買収などにより一緒になったり、両方の機能をもつようになってきている。また、ERPソフトウェア・メーカーも、ERP市場、特に大企業向け市場が飽和しつつあり、業績が今までほどの伸びを維持出来なくなってきているため、バックオフィス・システムであるERPソフトウェアの延長線上の格好の分野として、フロントオフィス・システムであるCRM分野に参入してきている。

CRMは単にヘルプデスク・ソフトウェアとSFAの融合や、ERPからの拡張というだけではない。それは、CRMがコールセンター、そしてそれに関連したCTI(Computer Telephony Integration)、そしてインターネットと切っても切れない深い関係があるからである。コールセンターは顧客のヘルプデスクの重要な要素であり、また、セールスにおいてもアウトバウンド(コールセンターから電話をかける)のコールセンターは重要な役割を果たす。コールセンターが単に電話オペレーターの負荷の均等化などだけではなく、CTIを利用した高度なものであれば、これはまさに顧客データベースの内容に基づいて対応しているものであり、ヘルプデスク機能とSFA機能の両方に共通したものといえる。したがって、CTIをフルに活用した高度なコールセンターにおいては、ヘルプデスクとSFAを一体化したCRMは、まさにぴったりのアプリケーションと言える。

インターネットについても、たとえば、ヘルプデスクのためのコールセンターにインターネット対応機能をつけて効率化するとうのは、今や常識化していることである。また、インターネットを使った販売支援としては、インターネットの特徴を生かし、1対1マーケティング(マス・カスタマイゼーション)を行うことが出来る。まさにインターネットとCRMは切っても切れないものであるといえる。

このような状況のもと、CRMの主力メーカー各社も、SiebelがSiebel 99、VantiveがVantive Web Enterprises、ClarifyがClarify eFrontOffice、RemedyがRemedy@Workと、それぞれWebベースの製品を最近次々と発表している。CRMはこれから注目しておきたい分野である。

(4/1/99)


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