COMDEX '97


今年もCOMDEXの季節がやってきた。今回も1日で広い会場を駆け回っただけなので、見落としも色々あると思うが、今年のCOMDEXの感想をレポートしてみたい。

COMDEXはご存じの方も多いと思うが、2,000社を越える出展企業を持ち、来場者も25万人に及ぶ巨大なイベントである。したがって、5日間すべてを使ってじっくり見ていかないと、小さいけれども本当に面白いという類のものは、なかなか見つからない。ほとんどの人は2日程度でいくつかの場所に分かれた会場を回るので、どうしても自分の焦点を当てたものに目が行ってしまい、それを中心に見てしまうようになる。

例えば、昨年は日本の新聞等ではCOMDEXでのインターネットが大きく書かれていたが、既にインターネットの大きな動きをそのさらに1年前から見ていた私や、米国にいる人間には、むしろCOMDEXでのインターネットは特にめずらしい新しいものという感もなく、COMDEXの中心という感じもまったくなかった。

今年は特に大きな製品の変化はそれほど見られず、したがって、見る人によって評価がかなり分かれたように思う。米国の新聞では安価なパソコンが多く見られたという書き方もされていたが、単に値段が安いというのは、新しい製品の発表が注目されるCOMDEXでは、あまり大きな出来事とは言い難い。日本の新聞はというと、やはりパソコンの大衆化(低価格化)、インターネットとテレビを融合したような製品、Microsoftの携帯端末用OSを搭載した製品などを紹介していたが、やはりここでも何となく焦点となる目玉が見当たらないという感じである。

私の印象も似たようなもので、やはり目玉製品にとぼしいCOMDEXだったように思う。その中で私の感じたものは以下のようなものである。まず第一はMicrosoftの大きさが目だったCOMDEXであった。以前から大きなブースを構えていたが、パートナー・ブースを含め、その大きさは他を圧倒するような印象であった。特に反Microsoft陣営と見られるOracle、Sun Microsystems、Netscapeなどは不在、もう一つの大きなソフトウェア・メーカーであるComputer Associatesも目にとまらないなど、他の追随をゆるさないような状況であった。

パソコン業界の雄、Compaqにしても、ファイファー社長がキーノート・スピーチをしたものの、独自のブースをもたず、Microsoftのパートナー・ブースに小さなコーナーをもったに過ぎず、ここでもMicrosoftの巨大さが目立っていた。パソコンで私の目に止まったのはDVD-ROM搭載のものがぼちぼち出始めたことである。 

今年もネットワーク・コンピューターの状況に注目してみたが、唯一目にとまったのはIBMのNetwork Station くらいで、それも使われ方がダム端末のリプレースが中心ということで、SunやOracleが提唱するJavaを使ったパソコンの代わりとなるようなイメージでのネットワーク・コンピューターはその影もなく、やはりネットワーク・コンピューターは特殊なアプリケーション向けのニッチ市場製品であるという印象が強かった。

Microsoft以外に私の目についたのは、いくつかの日本企業の元気さであった。これらの企業はメイン会場の中心的な場所に大きなブースを構え、これからいよいよCD-ROMにとって代わるであろうDVD-ROMや、さらにその先のDVD-RAMを前面に出したり、また、私が昨年のCOMDEXで目を引いたものとしてレポートしたデジタル・イメージ関連のデジタル・カメラ、カラー・プリンター、スキャナーなどの一連の製品を中心に、“これは自分達の強い部分である”という自信をベースに、かなり積極的な展示が感じられた。

ソフトウェア関連企業がほとんどMicrosoft一辺倒(Novell、Lotusなども大きなブースを構えていたが、今一つ注目に値するものは見られなかった)であったのに対し、日本勢を中心に次第々々と出てきているデジタル・イメージ関連ハードウェア周辺機器は、昨年私が大きな変化(ソフトウェアの波からデジタル・イメージ関連周辺機器ハードウェアの新たな波への移行)として感じたものが、確実に大きくなってきていることを感じさせた。

前にも述べたように、DVDやデジタル・イメージ関連周辺機器ハードウェアは、いずれをとっても、日本企業が主力の製品群であり、コンピューター本体、およびソフトウェアで遅れがちな日本企業がいよいよスポットライトを浴びる可能性が出てきた。

日本企業に加え、いくつかの韓国の企業もメイン会場の中心に大きなブースを構え、DVDを含めた幅広い展示がその積極さを示していた。ただ、韓国はここ2ヵ月余りで通貨(ウォン)の大幅下落、多くの不良債権をかかえた銀行の不安など、経済危機に見まわれているので、これが来年どのように韓国の情報通信企業に影響するか注目される。

日本も三洋証券、北海道拓殖銀行、山一証券、徳陽シティ銀行と、次々に大型の倒産が続いており、今後も金融、また建設等で大型の倒産も予想されるような、決して順調な経済状態ではないが、韓国と違って貿易は大幅黒字(韓国は赤字)であり、円も大幅安になる様子はなく、状況はかなり異なる。金融や建設など、規制の中で保護されていた業界と違い、情報通信関連企業は既に以前から国際競争にさらされており、今後ともその強さを発揮するものと思われるし、またそうならないと、日本経済が本当に危なくなってしまうことが懸念される。

(12/01/97)


メディア通信トップページに戻る