広河代表がベラルーシ「サナトリウム希望21」「困難の中の子どもたち・ゴメリ」「小児血液病センター」3団体を訪問


 97年10月6日から10月28日まで、当基金代表の広河隆一が20回目のチェルノブイリ訪問を行ない、今後の救援について現地団体と話し合いを行ないました。訪問したのはベラルーシのサナトリウム「希望21」、「小児血液病センター」、「困難の中の子どもたち・ゴメリ州支部」、ウクライナの「チェルノブイリの家族の救援」とその付属診療所、「チェルノブイリの核の傷跡」です。以下はベラルーシの団体訪問の報告です。

<サナトリウム「希望21」マクシンスキー所長との話し合い>

【来夏の特別保養(甲状腺手術後の子どものための)プロジェクト】

  • 実施期間:98年7/12〜8/3まで 計23日間
  • 受け入れ人数: 総計195人
    ベラルーシ 「困難の中の子どもたち・ゴメリ」
       子ども98人(5グループ)付き添い5人
       医師1人 心理ケア1人 合計105人
    ウクライナ 「チェルノブイリの核の傷痕」
       子ども84人(4グループ)付き添い4人
       医師1人 心理ケア1人 合計90人
  • 受け入れる子どもの条件
    甲状腺の手術を行なった子どもで、年齢は、原則として12〜15歳。事故後12年経つため、12歳以上とし、上限は今夏は14歳までが原則だったが受入幅がせまくなるので、15歳までとした(付き添いと医師の子どもの参加は認めない)。今夏の保養プロジェクト終了後、16〜18歳の子どもの受け入れをもっと考慮して欲しいという意見が出されたが、これに対処する案として、子ども基金ではベラルーシの年長の子どもたちをウクライナのサナトリウム「ユージャンカ」に送ることを考えている。
  • 費用
    *保養滞在費195人×23日×10$=44850$
    *フルーツ、ジュース、ビタミン・カルシウム剤については日本側が別個に用意する
    *日本側が参加者に支払う、各地の主要都市からの往復交通費は1往復分のみとする
     ウクライナの場合:キエフからミンスクまでの列車代(1往復)
     ベラルーシの場合:ゴメリまたはブレスト等からミンスクまでの列車代(1往復)
  • 子どもたちの前で、およびベラルーシ、ウクライナの公的な場所では、ガンという言葉は使わないよう、プロジェクト内容を知る全ての者に徹底させる。
  • “日本ウィーク”実施期間
    プロジェクト最後の10日間(1回のみ)とし、日本からの参加人数は約20人(詳細は未定)
【その他の来年度の支援決定事項】
  • 希望21は、通常160人が2カ月ずつ(4期/年)勉強しながら保養ができる施設だ。年間の費用は、ドイツの支援団体と公的団体、ベラルーシの国家、それに私たちの子ども基金が負担している。通常の保養に対して子ども基金が支援する来年度の金額は31200ドルの予定で、子どもはセシウム5キュリー/ku以上の高濃度汚染地から送られる。希望21では、来年1月1日から受け入れ人数が160人から195人になり、参加を希望する子どもに多くのチャンスが与えられることになる。しかし、保養費、施設費などの費用も増える。ベラルーシ国内ではインフレが進み97年1〜8月で44.5%価格上昇し(但し、ドル相場は18%の上昇)、これにより、今年に入って現在まで「希望21」では14万9000DM余計にかかった、ということである。
  • 医薬品補助 5000ドル
    1)甲状腺手術後の子どものためのカルシウム剤(ロカルトロール)など
    2)年間を通した子どものためのビタミン剤、抗生物質
    3)その他の傷薬など

<困難の中の子どもたち・ゴメリ パフォモバ代表との話し合い>

【団体運営費支援】

  • 車の購入費:7000ドル
    現在、団体が所有しているマイクロバスはかなり老朽化が進んでおり、ガソリンタンクに穴も空いているため、中古のマイクロバスを購入する資金を援助。車のサイドに「子ども基金」と「困難の中の子どもたち」のマークを入れる。車は日本から送られたものである、という表示も入れる。
  • 電話、FAX代の援助
【医療費支援】
  • ゴメリの病院で使用する、甲状腺の病気の子どもたちに使うホルモン試薬購入費(1000$)を支援。その他の薬代も支援。
  • “ドブルーシ地区病院”への薬代支援(1000$)。病院が必要な薬を、困難の中の子どもたちの団体が購入し、病院に渡す。
【その他に話し合われた事項】
  • 来夏、岩手の「子ども基金・奥羽」で母子1組保養する件
    できれば、英語が少しでもできる12〜15歳の子どもだとありがたい、ということを提案。現時点で候補にあがっている母子は、15歳の女の子と団体の仕事を手伝ってくれている母。しかし、女の子はあまり英語はできない。

<小児血液病センター 所長 オルガ医師の話>

【新センターがオープン】

  •  ベラルーシ共和国のミンスクにある小児血液病センターは、今年10月に改築された新しいセンターで医療を開始した。所長のオルガ医師に話を聞いた。
    「我々の国の困難な経済状態のなかで、どうにかこの新しい施設を再建することができた。以前このセンターは大学病院の敷地にあったが、新しいセンターはご覧のようにミンスク郊外の大変広い敷地を得た。 ここでは、ベラルーシ各地のすべてのガンの子どもたちに、完璧な診断装置により、完璧な治療を施してやることができる。子どもたちに必要な施設はおおよそすべてそろっている。トイレやシャワールームなどの衛生施設も大変近代的で、ベラルーシのなかで最も文化的な施設といっていい。しかし、この施設を維持していく今後の資金の見通しはまったくたっていない。これからも支援をお願いしたい。
     我々のセンタ−の特徴は、急性白血病を扱っていることだ。とくに小さな子どもの白血病は、身体の細胞が発育期にあるため病気の進行が速くなる。このセンターの45パーセントの子どもたちはそうした問題を抱えている。ここにいるのはすべて、さまざまなガンを患う子どもたちで、ガン疾患は全く減る傾向が見えない。むしろ、ガンにかかる子どもたちは徐々に増えてきている」
     この小児血液病センターへ、チェルノブイリ子ども基金は今年も抗がん剤代金として10000ドルを支援した。ガンに苦しむ多くの子どもたちのためにも、このセンターがきちんと運営されるよう支援を続けていきたい。

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