ナターシャ・コンツベェンコ 岩手で保養


「ナターシャの思い出」

 ベラルーシから来た、明るくて賢いナターシャは、楽しい思い出を一杯残して帰って行きました。一週間のホームステイをお引き受けしてから到着するまでは、心と身体に傷を持った、15歳の娘をどのようにもてなしたらいいかと大変心配しました。ところが、案に相違して、とても元気な明るい子だったので、特別気を遣わずに共に生活することが出来ました。

 「ワタシノナマエハナターシャデス」に始まり、「コンニチハ、メ、クチ、ハナ」…等、日本語をいろいろ使ってみせました。そして、毎日新しい言葉を次々に覚え、その記憶力の良さにはびっくりしました。でもある朝、2階から降りて来て、「オヤスミナサイ」と言った時、あっと気付いて大笑いしたこともありました。夫が、ロシア語の言葉を思い出せず口籠っていると、直ぐにそれと察して教えてくれたり、食事の後片付けを上手にキチンとしてくれたり、本当に利発で優しい子でした。

 海で泳ぐのは初めてのことで、一日三陸海岸で遊びました。海の水はしょっぱい、波がある等、生まれて初めての海水浴に夢中でした。浜で奇麗な石を拾い、パパのお土産にと沢山持って帰りました。

 そんないろいろの思い出を作っていよいよ東京へ向かう日の朝、盛岡駅へ見送って行きました。新幹線の窓越しに見たあの子の泣き顔…このまま発病しないで元気でいてくれるようにと願わずにはいられません。

 あの人なつっこい元気な笑顔に会いに、ベラルーシに行きたいねと話しております。

(伊勢久美子)


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