広河隆一のチェルノブイリ報告

- 28回目のチェルノブイリ取材を終えて -


◆ウクライナ

 外務省NGOの支援を受けて「子ども基金」が建設中の「南(ユージャンカ)」の<子どもの家>を視察しました。ドイツの救援団体は子どもの宿泊棟を建設する方向で検討中です。建物の内装に関しては、日本でパッチワーク・日本の絵画など募集して、壁に飾るなど日本から送った建物をアピールとしたい。<チェルノブイリの家族の救援>では現在6500家族の会員がいるが、そのうち会費を支払っている会員はその30%にすぎません。会費は24グリブナ/年(約500円)ほどだが、それさえ支払えない状況にある。特に甲状腺手術後の子どもの会員で会費を払える家族はないという。この会費を子ども基金が支援してもいいのではないかと思う。<子どもたちの生存>という現地の救援団体にこれまで送っていたの保養費は、来年には「南」に保養する子どもの分を支援したいと考えています。

◆ベラルーシ

 <希望21>では医療センターをはじめとして施設拡充中でした。子ども基金から外務省支援委員会の支援を受けて医療機器(心電計、呼吸運動記録器、検眼鏡)を支援しました。これから医薬品も援助します。また、放射能医療センター<アクサコブシナ>では私たち基金が支援している子どものためのリハビリ室が来年4月以降新しい建物へ移ります。呼吸機能の困難な子どものため音楽によるリハビリのために、楽器の支援要望を受けたので、今後検討したいと思います。

◆子どもたちの状況

 今回10家族を訪問しました。必ずしも事故のせいだけではないが、子どもたちは非常に貧困の中にいます。例えばベラルーシのある子どもは最近母を亡くしました。もともと父はいなくて、姉が身元引受人になっていて、非常に困窮した生活を送っていました。
 また、ガンの告知については、非常に気を使わなくてはいけません。告知されていない子どもも多いですし、また現地ではガンの告知はそのまま死の宣告と受取るケースが多いのです。
 手術の後に放射性ヨ−ドを飲むのは、ガンが転移を調べるためです。転移している子どもには大量のヨード剤を与えます。この治療でガンの進行がおさまれば、定期的な検査を行なってガンが進行してはいないかを注意するのですが、どうしても止まらない場合もあります。放射性ヨードを飲んだら、親からも隔たれた部屋で入院し、鉛のついたてのあるところで食事をします。多くの場合子どもたちは自分の病気について知らされていません。最近ベラルーシで自分がガンだと知って自殺未遂を図った21歳の青年の例を聞きました。また、里子ではないのですが、どんなに手を尽くしても転移が止まらず、ガンの進行を止められない女性が、19歳で亡くなりました。また、手術したあと結婚した妊婦二人が一週間ほどで会おうとすると流産していました。

◆里子について

 なかには里親からの手紙が来ない、という子どももいました。子ども基金によるサポ−トを考えたい。子どもは手紙を大変喜びます。残念ながら今の事務局には翻訳するなどの作業ができる体制にはないが、絵葉書などの簡単な例や、カードを送る呼び掛けなど通信でアドバイスすることはどうかと思う。また、「里親」の名称のいい直しをしたいので案を募集したいと思います。
 また現在、里子の条件として、甲状腺手術後であり、困窮家庭の子どもとしています。事故から13年以上が過ぎ、「子ども」は少なくなってきています。でも援助のスタ−ト時は16歳以上の子どもの場合はできるだけ避けたい。

◆50ドルの援助

 国によっては“ドル”のかたちで渡すのが非常に難しくなっている。しかしインフレが激しく、“ドル”で渡すのがベスト。これからの救援は難しい状況にあります。例えば、ウクライナでは銀行から支援金を引き出したら2日以内に渡さなくてはいけないと法律で決まっている。場合によっては何百キロとはなれた子供の家にお金を届けています。また、親がアル中などでお金を渡せない場合は現地で責任者が子どもと一緒に買い物に行き必要なものを購入したりしている。今のところ、100ドル/年を必要な経費として現地団体へ渡しているが、これは「子ども基金」が、他の一般募金を使っていることになります。里親制度にかかる経費について、50ドルをそのまま子供に届けるために、今後里親の方々に毎月のお金に少額を上乗せしていくことについて意見を聞きたいと思います。

◆里子の支援のうちきり

 取り消し、支援のうちきりについてあらかじめ取決めを再度行いたい。約束の2年間のうち経済状況が改善された場合、例えば里子にきまった時は父がいなかったが、その後母が再婚した場合、また、両親が働き出した場合、もっと困っている子どもに支援をして欲しいと救援団体は依頼してくる。最終的には里親との相談になると思う。また、子どもが遊びのためにお金を使ってしまうこともあります。「素行」の善し悪しを里子の条件とは考えていませんが、日本からの支援金の使い方については監視する必要がある。現在は現地の救援団体が監視し、何かあれば日本に報告する体制にある。しかし遠く離れて住んでいる子どもたち一人一人の状況を常に把握するのはやはり難しい。

11/20「里親の会」「運営委員会」より


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