ミンスク・小児血液病センター



訪問者:チェルノブイリ子ども基金  向井雪子  同スタッフ(通訳兼) 佐々木真理


オーリャさんと祖母


ビタリク君と母

現在、ミンスク郊外にあるこの病院は、子ども基金が活動を開始したばかりのころ、ミンスク市内にあった。広河隆一撮影のバーニャとアレサという2人の子どもがベッドに寝ている写真を覚えている方も多いと思う。
入院していた他の子どもたちの写真と共に、各地の写真展会場に展示された。これらの写真をきっかけとして子ども基金の救援の輪は広がり、今につながっている。子ども基金では、この病院に毎年医薬品代を支援している。今年は、通販生活読者からの募金を医薬品代として支援していただいた。入院している子どもたちや付き添いの人たちの話しを聞いてきた。

教育担当(心理学者)のエレーナ・ワシーリェヴナさんが病室を案内してくれた。非常に明るい方で、大きな子どもたちとは友達みたいに、また、付き添いの方にも気軽に声をかけていた。1100人の子どもが入院している、この病院には学校も併設されている。図書館、レクリェーション室、付添の人たちが使える台所などが備わっている。白血病だけでなく血液のさまざま腫瘍の子どもたちが入院している。

最初に少し大きな子どもが入っている病室を訪問。*何歳か *どこから来ているか、*どのぐらい入院しているか、などを本人あるいは付き添いの人に聞いた。

大きな子どもの病室で

オーリャさん― 18歳、グロドノ州ヴォルコビスク市 2度入院している 3年目 昨年、病院の学校を卒業した。髪の毛がなかったがピアスをしていたので女の子とすぐにわかった。本人の話:レクリェーション室や図書館で過ごす。外出は禁止されている。友達は入院の子どもたちが替わるのであまりいない。付き添いのおばあちゃんが「いいときも悪いときもある」と語った。写真を撮っていいかと聞いたら笑顔でOKしてくれた。

ビタリク君― 13歳 ミンスク州モロジェチナ 
1回目の入院 10カ月間 本人は眠っていた。かなり具合が悪そうに見えた。付き添いのお母さんの話:化学療法を行っている。9月まで入院の予定。今後の治療法など決まっていない。3歳上の姉がいる。家ではお父さんとおばあちゃんがいる。

ダーシャさん― 17歳 ミンスク州コグリスク地区
付添はいなかった。まだここに来て2日目。1週間ぐらいいる予定(検査のためか)。看護婦さんなどみんな親切。 

レクリェーション室で

コーリャ君― 16歳 スベトロゴロスク市 16カ月間 本人の話:ここの部署の人たちはみんないい人。勉強は数学が好き。お父さんとお母さんが時々来る。「この子はここに長いのでお友達なのよ」と案内してくれたエレーナさん。

小さい子のいる病室に移動

アーニャちゃん―4歳 ブレスト州ピンスク 半年間 血糖値が今あがったところだから機嫌が悪いのよ、とお母さん。お友達ができて仲良くしてくれるそう。不機嫌そうに下を向いていたが、シールを手渡したらとたんに笑顔になった。

ヤロスラフ君―5歳 ブレスト州ピンスク市 3年間 レクリェーション室でアニメが始まる時間らしくそわそわしていた。3年もいるというのにとてもわんぱくそうに元気に見えた。母の話:活動的で社交的。お友達がたくさんいる。大きい子どもとも友達。ミニカーなどのコレクションがベッド脇に飾ってあった。ブロックで自分で作っている。食事は大体食べている。キューリ、フルーツ、魚などが好き。


アーニャちゃん

ヤロスラフ君

赤ちゃんの部屋

ソフィヤちゃん― 11カ月 6カ月間 目の腫瘍で入院している 片方は見えない。もう片方の目も治療中。どのぐらいの期間がかかるかわからない。化学療法もしている。お母さんは25歳。妊娠中も産まれたときも異常がなかった。食事は大人と同じものを食べている。寝るときだけミルクを飲む。

ニキータ君― 1歳 ミンスク州 9か月間 
一度歩き出したけれど、今また歩けなくなった。食事は食べている。家には7歳の姉が父と祖母と留守番をしている。


ソフィアちゃんと母

ニキータちゃんと母

小さい子のレクリェーション室で

イゴール君― 3歳 ミンスクの近くロゴイスク市 1年以上いる 母の話:お友達もたくさんできた。外出もOK。もうすぐ帰れる。治療中はがんばった。お母さんは元看護婦さんだったそうでとてもよく看護をしているとエレーナさん。

ジーマ君― 3歳 ゴメリ州 エリスク 1週間だけ検査のため入院 お友達はまだできない。いったん帰るがまた来なくてはならない。早く帰ろう、とお父さんにしがみついていた。あとで、エレーナさんが、今日はいい日でしたね。めったにお父さんの付き添いに会うことはない、それも男の子に付き添う父親は珍しいですよ。この国では男の人はいい親じゃない人が多い、と言われた。

重症病棟で

最後に案内してくれたのは骨髄移植手術をしたばかりの子どもが入る部屋。6人の子どもがそれぞれ隔離されていた。その病棟に入るときは靴にカバーをかけるように言われ、誰でもは入れない、とのこと。子どもたちはガラス越しに仕切られた部屋にいた。
付き添っていたおばあちゃんは、ここにいても子どもに触れることはできないけれど、寂しがるからそばに見えるだけでもと思って毎日来ている。家が近いからね。子どもとはときどきガラス越しに電話で話をする。

重病の子どもを見ながら話を聞くのは辛かった。通訳の佐々木さんも大変だったと思う。病室を回った後、
薬局部主任のアレフチーナ・ロムアリドブナさんが薬の棚を見せてくれた。たくさんある棚とほとんど在庫が泣い棚があった。「たとえば、薬局では薬が足りなくなったりするが、さまざまな人道支援を常に探している。子どもたちに必要な薬でも国で許可されていない薬もあり、他の国から手に入れたりしている」

チェルノブイリの影響はあると思うか?と聞いてみた。「ほとんどがそうだと思います、私はそう思います。次の世代が心配です」甲状腺ガンの場合はチェルノブイリとの因果関係が明確であるが、白血病は、因果関係が必ずしも明確ではないと言われている。しかし、私たちがインタビューした人たちは、地図で調べたところほとんど汚染地域に住む人たちだった。お母さんたちだけでなく、小さな赤ちゃんにまで影響が出ている。このような世代を超えて健康に影響が及ぶ問題について、最近出版された『未来世代への「戦争」が始まっている』(岩波書店 綿貫礼子、吉田由布子共著)で詳しく述べられている。「未来世代への責任」を私たちは負っている。 

(報告 向井)


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