ミンスク便り


長い夏休みが終わり、9月になりました。ベラルーシにとって記録的だったという8月の暑さも、つい一週間ほど前のことだったのが嘘のようです。旧ソ連では、9月1日といえば新学年スタートの日で、今年も新一年生の入学式がこの日、ベラルーシ全国で行われました。今年は我が家の長男が小学校に入学したため、当事者として入学準備を体験することになりました。ベラルーシの学校制度、教育制度も一大テーマではありますが、今回は小学校入学に絞ってご紹介したいと思います。

ベラルーシの学校教育(大学などの高等教育未満)は、現在11年制です。以前は満7歳入学の10年制だったのが、現在は6歳からの11年となっており、このうち1?4年生が初等教育、9年生までが「基礎教育」と呼ばれる義務教育と位置づけられますが、多くの学校では11年生まで一貫教育で、日本のように小学校・中学校・高校を分けて考える習慣はありません。まとめて「学校」(シュコーラ)と呼びます。

ほとんどの学校は公立で、教育は無償です。ただ、給食代などは親の負担が必要で、入学に際しては、準備リストに従って、文具などの学用品を各自で揃える必要があります。学校によって差がありますが、一年生にしては揃えるものが多いという印象です。教科書は貸与されるものを使用し、4年程度使い回すようです。また、最近の傾向として、多くの学校で制服着用が義務付けられています。と言っても決まった服があるわけではなく、シャツにスーツなどのきちんとした服装、という程度で、周りの様子も伺いながら、服を考え、揃える必要があり、少々面倒です。通う学校は、原則として居住地によって決まるのですが、希望して空きがあれば他の学校に通う選択肢もあり、また親の希望で入学を先送りすることもそう難しくはなく、これは学校に限りませんが、やろうと思えばかなりの例外が認められるようです。

ベラルーシでは、学校関係者を含め、6歳入学は早過ぎるという人が多く、現在の小学一年生は、半ば幼稚園児のような扱いになっています。まず教室自体、近くの幼稚園の部屋を借りている場合が多く、息子の学校では、一年生4クラス中、3クラスが幼稚園での授業です(机は学校用のもの)。最初の一ヶ月は準備コースということで、授業もゲームをしたり、好きに絵を描いたりといった内容で、まだ教科書も渡されていなければ、時間割もありません。授業時間も35分と、通常の45分より短くなっています。一年生は登校するとまず簡単な体操をし、一時間目の授業が終わると朝食。さらに二、三時間の授業を受けると正午で、一日が終わります。ここで帰宅する子供もいれば、昼食をとり、昼寝や外遊びをして夕食まで、幼稚園児同様に残ることもできます。少なくとも慣れるまでは、保護者が送り迎えする必要がありそうです。

入学準備を通じて感じたことは、ベラルーシ人の教育熱心さと、何事も直前にならないと決まらない(決めない)ベラルーシ人の習性(?)です。子供が今年で小学生と言うと、ほとんどの人が「どこの学校?」と聞き、あそこの学校がいいよ、とアドヴァイスしてくれ、さらに「何かあったら口をきいてあげるから」などと言ってきます。こうした周囲の親切にも振り回され(というのは言い訳ですが)、息子の学校が決定したのは、入学一週間前でした。各学校とも、入学申し込みを8月末日まで受け付けているのも、最後まで迷う余地を与えている気がします。入学式の日時も、9月1日が土曜日なので前日だ、という人もあり、学校側から「1日です」という確認の電話があったのは、8月31日の朝。学校生活の詳細についても、入学式の日には先生もよく承知していない様子で、9月中旬の保護者会で明らかになるとのこと。その保護者会、数日後に迫っているのですが、時間は一体、いつ決まることやら。こんな調子で当面は、親子共に落ち着かない日々が続きそうです。

(花田朋子 ミンスク在住)

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