03月19日(土)[国が領土を言い出す時]

運動不足の解消のため週末はよくプールで泳いでいるが、スポーツクラブに行くと、いつもの顔見知りの彼がニヤニヤしながら話しかけてきた。「トクトウは我々の島だ。日本は何で今頃、タケシマの日を制定しりするんだ?」。アメリカに帰化したKoreanである彼は、すでにリタイアしているのだが、この地で一代でスーパーマーケットを経営する身を築き上げた。かつて日本の植民地下の国民学校で、日本語を強制的に学習させられたとかいう話は以前にもこの欄で紹介したことがある。その彼がいつもより若干しつこい感じで聞いてくる。一応笑顔で話しかけて来てはいるのだが、よく見ると目は笑っていない。竹島のことを何で今頃言ってくるのだ?と。アメリカのワシントンから見ている限り、今日本で起きていることの背景にある空気の変化がよくわからない。一体何が起きているのか。漁業権の問題か、あるいはもっと東アジアにおける安全保障上の国家戦略からか、きちんと基礎情報を踏まえなければ「感情論」に巻き込まれてしまう危険性がある。ただ、国が領土のことを唐突に言い出す時は、何らかの背景があることは歴史が教えている教訓だ。
それに関連するのかどうかは確言できないが、思い出すことがある。今年の2月19日の日米安全保障協議委員会(SCC)の共同発表文書のことだ。前日にワシントンポスト紙が文書のドラフト全文を入手して、日米両国が台湾防衛を共通の戦略目標に初めて据えた、と報じた。特ダネである。ところが不思議なことに、日本のメディアのほとんどがこの特ダネを無視した。ポスト紙が報じたように発表された文書には次の文言が明記されている。

・台湾海峡を巡る問題の対話を通じた平和的解決を促す。
・中国が軍事分野における透明性を高めるよう促す。

日米と中国をめぐるこの大きな潮目の変化を米メディアは大きく報じ、その後も今に至るまで米のアジア・ウォッチャーらは、この日米共同宣言の台湾への言及を大きく位置づけている。中国の全人代での反国家分裂法はこれを受けての動きとみるのが常識的な見方だろう。ポスト紙の記事を無視した日本の記者クラブ詰めの記者には何らかのバイアスがかかっていたのだろうか。その辺はよくわからない。ただアメリカのアジア・ウォッチャーの見方は実にすっきりとしている。共和党系のシンクタンクAEIのDan Blumenthalの見方などは非常にすっきりしていて、中国を仮想敵に据えた日米同盟の再強化論を記している。ということは、竹島の次は尖閣か?