「ニュースがすぐにわかる世界地図」
著者: 高野孟・中尾茂夫
出版:小学館
定価:本体1600円(税別)
発売:2004年3月20日

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私が企画・執筆の中心になり、経済・通貨の分野について中尾茂夫=明治学院大学教授に協力を仰いだ地図帳『ニュースがすぐにわかる世界地図』が小学館から 発売された。

巻頭の特集は「図解ニュース・アメリカ帝国の崩壊?」で、アメリカの世紀としての20世紀を振り返りつつ、21世紀も再びアメリカの世紀となるかどうかを、政治面を私、経済面を中尾茂夫明治学院大学教授が担当し、図・年表・グラフなどを使いながら50ページを費やして検証している。

特集の末尾は私と中尾教授による「大予測・21世紀もアメリカの世紀か?」で、私は……

(1)テロも片づいてアメリカ中心の世界秩序が出来る、
(2)アメリカが国際協調路線に転換、多極世界が実現する、
(3)混乱の中でアメリカ帝国が崩壊する

――の3つのシナリオを挙げ、その中で(3)を本命、(2)を対抗、(1)を穴とした。他方、中尾教授は国際通貨面から……

(1)アジアのドル依存が続きユーロはローカルマネーに終わる(つまりドルの1人勝ちが続く)、
(2)米欧亜3極化に進み、アジアは中国人民元主導に、
(3)大混乱の中でドル体制が崩壊する

――という3つのシナリオを描き、本命なし、(1)と(2)が対抗、(3)が穴と見ている。

本誌がかねて書き続けているように、21世紀初頭の世界の基本的な選択肢は、イラク戦争に象徴される唯一超大国気取りのアメリカの力任せの世界秩序づくりを容認し支持するのか、それとも「唯一」となったとたんに実は「超大国」というものが過去のものとなったのであり、国連を中心とした国際協調による問題解決を通じて米欧亜3極を中心とした多極世界を実現していくのか、というところにある。イラク戦争をめぐる米英と大陸欧州それにロシア・インド・中国を含むユーラシア大陸主要国との対立は、単にその戦争に大義があるかどうかという次元ではなく、まさに21世紀にどういう世界を作ろうとするのかの原理的=世界 観的な次元が絡んでいることであり、その中で日本は、原理も世界観もへったくれもないまま、いとも安易に対米追従を選んだわけである。

そのことと、長期的なドル下落傾向の中で、多くの国々がユーロを準基軸通貨扱いしてドル資産の少なくとも一部を振り替えている状況で、日本がほとんど唯一、ドルと米国債を買い続けていることとはパラレルなことで、つまりは小泉は国民に相談することもなしに、政治・軍事と経済・通貨の両面から崩壊もしくは 突然の引きこもりに陥るかもしれないアメリカ帝国との心中路線を選んでいることになる。

この基本的な選択肢をめぐって今世界は動いているというふうに見ると、日々のニュースも面白くなりますよ、というこれは1つの問題提起である。

第2部は普通の地図帳で、かつての『情報世界地図』(94〜98年版、国際地学協会刊)と同様、地図面にその国や地域の最近の出来事がメモとして書き込んであって、これは本当はCD-ROMで作ってそこをクリックするとその記事が出てくるという形にすべきものだが、国際ニュースに接したときにこの地図帳を開いてその国の地理や周辺関係を確認しつつメモを見れば、一層理解が深まると思う。

そして第3部は、テーマ別の図解ニュース解説やキーワード事典である。

『情報世界地図』を読んで頂いた方は、それとずいぶん作りが似ているなあと思うかもしれないが、それはそのはず、編集者もデザイナーも同じグループが担当 してくれている。まだの方は是非お読み下さい。


「最新・世界地図の読み方」
著者: 高野孟(本誌編集主幹)
出版:講談社
定価:本体720円(税別)
発売:1999年9月8日


ご好評いただいた「最新・世界地図の読み方」は絶版となりましたが、講談社の“オン・デマンド出版”システムにより、およそ900円(従来の定価は720円)プラス送料にて、少部数からでも注文をお受けできますので、ご希望の方は本誌までお申し込み下さい。

旧著『入門・世界地図の読み方』(日本実業出版社、1982年刊)は、私にとってなかなか思い出深い本で、地図というものを上手に使って国際政治・経済の仕組みを分かりやすく理解してもらうという趣旨がいささかの好評を得て、10年近くにわたって増刷を続けるロングセラーとなっただけでなく、当時TBSで『地球発22時』という情報番組を司会していた中村敦夫さん(現参院議員)が面白がってくれて2度も特集として取り上げてくれたり、それがきっかけで東京FMの朝の情報番組に毎週出ることになったり、三省堂の中学校向け国語教科書にまえがきの一部が教材として収録されたり、いろいろ反響を呼んで、人に言わせれば「高野の出世作」となった。

しかし、89年の「冷戦崩壊」による世界構造の激しい変動の中で、さすがに内容が追いつかなくなり、自ずと絶版になった。その後、いくつかの出版社から改版のお勧めもあったが、忙しさに取り紛れてなかなかその機会を得なかったところ、今回、講談社新書編集部の熱心なお誘いがあってようやくその気になり、この5月連休から6月一杯かけてほぼ全編を書き改め、20世紀末の今、世界で何が終わり何が始まろうとしているのかをそれこそ1枚の俯瞰図として眺め渡すことができるよう内容を一新した。定価720円なので、お近くの書店でお求めの上、ご一読頂ければ幸いである。

日々新たに、思いもかけぬ事件が起きて、地鳴りがしたり地割れが起きたり雪崩が落ちたりするような時代で、そうしためまぐるしく去来する現象を追いかけるだけでも相当な想像力が求められる。ところがわれわれジャーナリストの仕事は、例えば米国のユーゴ空爆とそれ以前から今日もなお毎日のように続いているイラク空爆とがどのように深い関連性があり、その2つをパラレルな出来事として捉えることの中から米国の軍事戦略の光と陰をどのように見定めていくかというようなことを問題にするわけで、そうなるとますます、未知の場所も含めた世界のあれこれの国・地域やそこに住む人々の思いについて、想像力をたくましくしなければならない。そういう場合に大いに役に立つのが地球儀や地図帳で、例えばアフガニスタンを普通の地図で見ればどうということもないが、モスクワを中心にした南北逆さまの地図で見ると、そこが失われることへのロシアの恐怖感が理解できたりする。われわれがごく日常的な仕事としてやっているそのような地図との付き合い方を、少しかみ砕いて、縁遠いことと思われがちな世界の政治や経済の動きを、案外に面白い身近な“謎解きゲーム”のようなものとして実感してもらおうというのが、本書の最大の狙いである。

地図に限らず、図表とか年表とかフローチャートとか相関図とか、総じて物事を「図化」して捉えることは、断片では気が付かない全体的な関連や構造を掴むのに大いに役に立つ。そう考えると、本書はその図化の手法を国際政治・経済の分野に適用した1つのサンプルであり、仮に読者がとくにそのテーマに関心があるわけではないという場合でも、自分の仕事や趣味の領域にそれを適用して自分なりのやり方を開発する刺激にもなるはずである。

全体は6部に別れていて、Aでは、世界地図というとメルカトル図法の横長のアレだと思い込んでいる固定観念を解きほぐすための頭の体操を試みている。Bでは、世界地図の中身に踏み込んで、国家と国境、人種と民族、少数民族と難民、言語と宗教、ユダヤ・華僑・マフィアのパワーなどを扱う。Cでは、陸の地図だけでなく海の地図にも着目して、海と海流、地殻の変動、食糧と環境などを考える。Dでは、交通とコミュニケーションに目を移して、鉄道と自動車、飛行機と空路、船と便宜置籍船、川と運河、海底ケーブルと衛星通信、インターネットなどのテーマを取り上げる。Eでは、経済と金融を中心に、人口とGDP、自動車と多国籍企業、時差と金融、武器輸出、産業と経済圏などを見る。そしてFでは、最近の注目スポットである北朝鮮、中国、インド・パキスタン、中東、旧ユーゴなどを論じている。

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