麻布十番タウンガイド


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《交通案内》営団地下鉄南北線と都営地下鉄大江戸線2 本の新しい地下鉄がようやく開通して、週末などは遠くから来たらしい地図を片手の散策客で賑わっている。今までは日比谷線の「六本木」から芋洗坂を下って 我々のオフィスまで6〜7分歩かなければならず、急ぐとどうしてもタクシーになってしまう“陸の孤島”に近い状態だったが、これでだいぶ便利になった。

《周辺環境》(株)ウェブキャスターと(株)インサイダーのオフィスは、麻 布十番商店街の北端にある。麻布十番は、若者でにぎわう六本木や西麻布と違って、昔の下町の懐かしい雰囲気と、周りの緑の高台にある数十の各国大使館が醸 し出すバタくさい気分とが妙にミックスした、静かな場所である。街を歩くと、しゃれたブティックの隣に、おばさんたちの手作りの純日本風家庭料理の弁当屋 さんがあったり、百年以上の歴史を誇る鯛焼き屋の老舗の前にフォーションの紅茶のティールームがあったりしておもしろい。

《歴史背景》麻布の歴史は古く、昔からこの一帯で村人が麻を植えて布を織っ ていたのでこの地名がついた。徳川時代にはたくさんの大名屋敷や寺院・神社が出来て、商店街が発達し、江戸城より南ではここが一番の繁華街だったらしい。 幕末の黒船騒動を経て米国が江戸に最初の領事館を開くときに、1000年以上も前からあった麻布山善福寺の一角を借りた。明治時代になって他の国も続々進 出してこの一帯に領事館や大使館を設けたので、商店街も大いに潤った。明治初期には麻布は東京市の15の区の1つだったが、戦後1947年に新たな区割り が行われて、麻布、芝、赤坂の3区が統合されて23区の1つである港区になった。旧麻布区には、麻布台、西麻布、南麻布、元麻布、麻布十番などの街があ る。

 1964年に日比谷線が出来るときに、十番の商店街の店主らは保守的で、地下鉄の駅が出来ることに反対した。そのため営団は、当時は全 く何もなかった六本木に駅を作った。ところが六本木は大いに繁栄し、十番は衰退の一途を辿った。商店街のボスたちはすっかりあわてて、地下鉄誘致運動を展 開したところ、今度は2本も来るということになった。それに合わせて、商店街から電柱を取り除いて花みずきの並木を植え、アスファルトをはがして敷石の車 道と煉瓦の歩道を作り、あちこちの街角に彫刻を配置し、大きな地下公共駐車場を建設するなど、商店街再生に向けて膨大な公共投資が行われてきたが、住人の 多くは、商店街の保守性によって逆に温存されてきた古臭さが消えるのではないかと心配している。

《十番温泉》ところで十番商店街の真ん中あたりにある「麻布十番温泉」は、 山手線内では唯一の本物の温泉で、コーヒー色をした気持ちのよいお湯である。1階は「越の湯」というふつうの銭湯で、毎日午後3時に開く。3階は一風変 わった場所で、小さな風呂とスチームサウナのある風呂場から出ると広い畳の宴会場でひと休みしてビールと冷や奴を楽しんだりすることの出来る、一種のヘル スセンターである。ステージにはカラオケがあり、週末ともなるとご近所の(だけではなく電車に乗って遠くから来る人もいるらしい)爺さん婆さんたちが浴衣 姿で集まって民謡踊りなどをやっている。それをボンヤリ眺めながらビールを飲んでいると、どこか東北の寒村にでも来ているような錯覚に囚われる。3階は 11時に開くので、事務所で徹夜した後などは、ちょっと仮眠してから温泉に入って、時間を見計らってマッサージを呼んで貰って、それから向かいの「更級堀 井」に行って昼から板わさでビールを一杯。これで大体回復する。火曜日定休。←十番名物だった温泉も潰れて今は駐車場に。

《飲み屋》バー、居酒屋、そば屋、レストランなど素晴らしい店がたくさんある中で、私のお馴染みのトップ10を紹介しよう。いずれも当オフィスから数分以内にある。←と言っても、この10年で3軒は潰れた。温泉も消えるし、「はじめ」の親父も亡くなるし、十番も段々寂しくなる

(1) Gate(ゲート)←08年に廃業、今は焼き鳥屋に代わった。
大きな木のカウンターがあるオーソドックスなショットバー。い つも趣味のいいジャズが鳴っている。マスターは小柄ながら元ラガーのラグビー狂。夜中に仕上げで食べる小振りの博多ラーメンが抜群。夜2時までで土曜も やっている。当社オフィスと同じビルの1Fにある。日祭日定休。

(2) はじめ 3404-8736
麻布と言わず都内でも有数の料理がおいしい居酒屋。刺身はご亭主自ら河岸でで選んできた最上のネタだし、豊富な料理のメニューのどれも工夫がこら されていながらさりげない。お値段もリーゾナブルで若い人も多い。女性には、ウニ丼・イクラ丼が大評判。いつも満員なので予約が必要。2時までで土日祭 休 ←ご亭主のキンちゃんは私の馬乗り仲間でもあったが、癌で急逝し、残された店員の皆さんが後を続けている。

(3)シモン 3470-5889
この界隈は韓国大使館が近いせいもあっておいしい韓国料理店はいくつもあるが、比較的最近オープンしたここは、ソウルの裏町の家庭料理風居酒屋の味。無休だが時に臨時に休むみたい。「はじめ」の真向かい。

(4) EZ Bar(イージーバー) 3497-8586
これも木の香りのするバーで、デートにもってこいの場所。料理が自慢で、夏の「冷たいスパゲッティ」がなかなかいい。土日祭も開いているので便利。

(4) 樽喜 3402-8490
頑固なおやじが作るおでんが有名で、遠くからも芸能人を含めお客がやってくる。ヘルシー素材のシンプルだがひと工夫あるつまみ類もすばらしく、 「あ、これ今度ウチで作ってみよう」ということになる。3時頃に十番温泉の銭湯に行くと、仕事前のおやじと裸の付き合いが出来る。土日祭は休み。

(6) 更級堀井 3403-3401
十番にはいいそば屋の老舗が3軒あって、元はみな同根らしいが、大体において通人たちは一致してここがいいと言う。今は9代目で、10代目の坊主 がすくすくと育っている。8代目の女将さんは故あってここを離れ、恵比寿に小割烹を出している。レジで売っているそば茶と柚こしょうはお勧め(在外日本人 にお土産に持っていくと泣いて喜ぶ)。水曜日と第一火曜日が休み。

(7) 春(しゅん)←09年に潰れた。
並の中華料理に満足できない人向けの、超達人による“中華料理とは何か”の哲学的原点を思い知らされる品々。テーブルと奥座敷もあるが、カウンターに座って、今日の自慢の材料でマスターのイメージに任せて作ってもらうのがベスト。

(8) 横田 3408-4238
最上のてんぷら。8人が精いっぱいのカウンターだけなので予約が必要。マスターが一人一人の好みや食べるペースに合わせて絶妙のサービスをしてくれて、とても豊かな気分になれる。その割には高くない。火曜日が休み。

(9) ひむか 5443-5198
十番商店街にある宮崎料理の店「まとや」の料理人=柴田さんが独立して、2000年末に仙台坂下に自分で店を開いて大流行している。素材も、宮崎 弁丸出しの柴田さんが作る料理もいい。幻と言われる宮崎産の焼酎「百年の孤独」はここに行けばいつも飲めるし、もっと珍しい貴重な日本酒・焼酎にも出会え るので、その方面の探求者にはお勧め。仕上げは鯖茶漬けか冷や汁。日曜日休み。

(10) 追分食堂 ←潰れてしまった。
特に美味しいわけではないが、店の名と魚フライ定食・カレーライス・ラーメンといったメニューがマッチしている懐かしい店。昼食向き。

《若干のリンク》

(1)DEEP AZABU
岩田さんという個人が開いている麻布十番に関する最もクールなサイト。とくに十番の歴史についての研究が深い。リンク集も役に立つ。

(2)麻生十番商店街
商店街の若手が頑張って作っている。お店の紹介が有用だろう。

(3)ほぼ日刊イトイ新聞
1年ほど前に南青山から移ってきた糸井重里の事務所が出していて、タウン情報もある。

(4)カレイドスコープ昔館
十番の“謎”めいた店の1つで、カレイドスコープ(万華鏡)の日本唯一の専門店。


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