農と言える日本・通信 No.16  2000-01-05      高野 孟


《回顧》昨年を振り返ると……鴨川・帯広それぞれの99年5大ニュース!


 鴨川自然王国では、何と言っても、

(1)年間を通じた月1回ペースの集合日程を設定し、1反歩の「われわれの田んぼ」で完全無農薬のお米を作ることを中心に、畑仕事や森林伐採作業を散りばめて、初めての方々を含めてたくさんの方々に参加して頂いたことが、大きな前進だったと思います。その中で、

(2)石田三示さんたちが作る無農薬・低農薬の「長狭米コシヒカリ」の通販システムも始まり(7月)、現在約20家族が月合計約150キロを年間契約で購入しています。中には、お米の味の探究に目覚めて、石田さんから玄米で送ってもらって、家庭用精米器で好きなように搗いて食べるという凝り性派も(私を含め)何人も出てきました。このように、自然王国の活動がともかくも軌道に乗り始めたのも、

(3)国王である藤本敏夫さんがいよいよ本気で(それ以前は本気じゃなかったというわけではありませんが)この地に定着すべく、自宅(3月)とサウナハウス(11月)を新築すると共に、大田代集落の「組長」に選任されて(2月)、まあ、何とか無事勤め上げるなど、地元の信頼を積み重ねてきたことが大きいと思います。自宅新築に伴いオフィス棟となった旧自宅のパッシブソーラーハウスには、ツリーハウス事業を進める平賀さんの「(株)ガンコ山」、高野の「(株)インサイダー」がそれぞれ横浜、東京から本店登記を移転しました。

(4)外的環境としては、38年ぶりに農業基本法が改定・施行されて(10月)、ともかくも「持続性の高い農業」が国策となるという大転換が行われ、それを具体化するための関東農政局の審議会の中心メンバーに、こともあろうに元犯罪者の藤本氏が指名されるという、これまでには考えられない事態が生じました。

(5)王国の事務局体制では、昨春から中橋さんが入ってようやく安定するかに思われましたが、いろいろ折り合わないことがあって秋口に退職、「どうしようか」と言っている時に、鴨川常連で十勝体験者でもある渡辺英理ちゃん(25)が、な、なんと、お茶大→プレジデント社広告部というキャリアウーマン・コースを投げ捨てて来春に鴨川に移住し、事務局員として働くことを決意表明し、衝撃を呼びました。また昨秋以降、藤本さんの大学先輩である田中正治さんが、自然王国に併設の「峰岡T&T研究所」主任研究員、兼、自然王国事務局臨時ヘルパーとして月のうち半分くらい現地に滞在するようになりました。

 他方、十勝では……

(1)帯広市内の著名レストラン「ランチョ・エルパソ」が道路拡幅による立ち退き補償を得て、全面的に改築を行い、暖炉のあるゆったりとしたメイン・スペース、奥の長いカウンターバーとそこからすべてを見渡せるオープン・キッチン、2階の大きな貸し切り部屋とギャラリー、表通りに面した手作りハム・ソーセージ&ビールのショップ、そして1階はトイレも含めて車椅子OKの完全バリアフリー(備え付けの車椅子2台は篠塚恭一さん提供)……というすばらしい新店舗がオープン(12月)。開店記念イベントには藤本さんと次女で歌手のヤエさんも参加しました。私も暮れに行きましたが、連日満員の大盛況で、店主の平林夫妻が待合室で待つほどでした。

(2)その改築に伴い、これまでレストランの裏にあったハム・ソーセージ工場の一部「生ハム工場」をリバティファーム牧場内に移転・増築し、また北海道の補助金を得てデンプン質の糖化装置を中心とする立派なビール開発工場を新築しました。現在、従来は廃棄物として捨てられていたトウモロコシの芯や、ドングリ、カボチャなどいろいろなものからビールを作る実験を進めています。また、インターネット上で「自分流のビール」を注文生産する『びあごっこ』もスタートして好評で、樽数を大幅に増やすことを検討中です。

(3)リバティファーム内のわれわれ東京・札幌組のログハウスが完成(7月)、10万円の入会金を納めた会員は誰でもいつでも、1泊1000円のシーツ代だけで泊まれるようになりました。

(4)帯広市内にある国策名門企業「日甜」の広大な元本社工場敷地を活用して「研究と文化の村」を作ろうという大構想が浮上し、平林さんを中心にプロジェクトチームが編成されました。

(5)リバティーに隣接する「広洋牧場」で、藤本さんや加藤登紀子さんも参加して「ひまわり畑」の開墾と種まきを行いました(5月)。昨年の分はちょっと実用になりませんでしたが、出来れば今年も挑戦して、「北海道の大地に根ざしたひまわり油」を作っている旭川の旭油脂に原料として供給出来るようになりたいと考えています。

 以上、両自然王国の昨年10大ニュースでした。

《予定》今年はこんなふうに遊び、かつ働きましょう!

■鴨川では、昨年やった1反歩に加えて数反歩(合計最大5反歩)の田んぼを用意し、「棚田トラスト会員」制度をスタートさせます。現在プランニングの詰めとパンフレットの作成が進行中で、近く詳細を発表します。また併せて「大豆トラスト会員」制度も行います。そこで今年は、この両制度を中心とした協同農作業と森林伐採作業、丸山町を中心とするツリーハウス事業などが日程の軸となります。もちろん、夜の大宴会は引き続き主な目的の1つです。また自然王国の一角である佐々木惇さんのチランジアは昨年、東急ハンズや銀座プランタンなどで好評を博し、今年はビニールハウスの脇にチランジアを使った手芸教室を開こうという考えで、恩田真人さんのところの陶芸教室とも併せて、たくさんの人が訪れるようなプログラムを組みたいと思います。さらに、大山不動尊前の「青少年センター」を活用して、高齢者のための「農芸介助」ハウス&システムを作るプロジェクトも、藤本さんと日本アビリティーズ協会の伊東さんで動き出しました。

■帯広では、冬春夏秋と4回の集合日を設定し、十勝平野の四季を存分に楽しもうと思います。馬によるトレッキングやキャンピングはもちろん、スノーモービル、スキー、ラフティング、カヌーなどアウトドアは何でもあり。近くの温泉や然別湖、遠軽のオショロコマ釣りなどのオプショナル・ツァーもやりたいと思います。と同時に、ただ行って遊ぶだけでなく、東京人・札幌人が十勝人と協同しながら新しい生き方・暮らしぶりを探っていくことが「十勝渓流塾」の大きな趣旨ですので、平林さんが推進する音楽を中心とした「日甜・研究と文化の村」建設計画に参画したり、ひまわりやカボチャなどの無農薬栽培に手を貸したりしながら、リバティファームのある「拓成村」一帯を都会人の「田舎暮らし」「定年帰農」受け入れの拠点にしていく可能性を追求したいと思います。

■両王国の「年間日程」は、いま最終調整中ですので、数日中に改めてお知らせします。

■《電農楽市》もしくは《電脳楽市・食と農》をスタートさせます。本通信の昨年7月7日付No.2で提案したままになっていましたが、今年早々にまず出来るところから無理なく始めるということで、鴨川の長狭米、大豆・味噌、十勝の地ビールとハム・ソーセージ、旭川の純国産ひまわり油・芥子、本家自然王国の「藤本敏夫の酒」、納豆など、これは文句なしというものをインターネット上で紹介・解説・販売し、またそれらの食品を使っている飲食店などを推薦します。これも詳細を追って発表しますので、ご期待下さい。

《消息》

■十勝ログハウス会員で鴨川も来訪した東芝の旭岡勝義=ITS(高度交通情報システム)室長は、「これ以上企業内で無駄に時間を消費するつもりはない」との思いで12月末をもって退社、「新しい時代の枠組みづくりに身をもって参加するため……しばらくは自宅にて一休み」するとのことです。

■自治労本部で10年間過ごしてきた鈴木英幸さんは10月の連合大会で同副事務局長となり、新たに発足した「連合政治センター」の事務局長となって、労組と民主党の関係を取り仕切ることになりました。「自治労は旧総評系だが、旧同盟系幹部も鈴木氏の事務局長就任を『全体のことを考えて運営できる人物』と歓迎している」(10月29日付日経夕刊フォーカス欄)だと。今年は総選挙もあるし、忙しくてなかなか鴨川・十勝に来られないかも。あ、民主党から立候補したい人は鈴木さんに言えばバッチシです。

■鴨川常連の水野葉子=日本オーガニック検査員協会会長が12月?日付朝日新聞「ひと」欄に堂々登場。「何でも自分の目で確かめ、納得しないと気が済まない。だから『有機(オーガニック)食品』がどんな環境でどのように作られているかをチェックする仕事が楽しい。来春施行される改正JAS法に伴い、第3者機関による検査・認証を受けないと食品は『有機』と表示できなくなる。JAS協会の検討委員会のメンバーとして具体的な基準や方法を議論中だ。『国際的に通用し、消費者が安心できる制度に貢献したい』(以下略) ▲