農と言える日本・通信 No.54  2001-08-01      高野 孟



●鴨川集合は8月4〜5日、夏祭りは8日!

 鴨川集合が8月4〜5日(土〜日)に迫っています。引き続き8月8日(火)の大山不動尊の夏祭り(御神輿担ぎ)もあります。両方もしくはどちらかでもご参加下さい。詳しくは「鴨川自然王国」ホームページ(http://shizen-ohkoku.smn.co.jp/)をご覧の上、直接現地に参加申し込みをして下さい。

 また帯広集合は8月15〜19日です。乗馬、釣り、薪で炊くサウナとバーベキューなど。私は15日朝第1便で行って18日最終便で帰ります。

●羅臼の海の幸は「知床三佐ヱ門本舗」で!

 先日、知床半島を1泊2日シーカヤックで回る旅をした際に、羅臼の豊かな海産物をインターネット販売している「知床三佐ヱ門本舗」の町田さんと面識を得、さっそくホームページを見てほっけ、きんき、鮭の粕漬けなどを注文して大満足。羅臼産というだけで市場では割高で取り引きされる海の幸が簡単に入手できます。ホームページもとても親切に出来ていて、見るだけでも楽しいので、http://siretoko.com/にアクセスして下さい。 フリーダイヤルは0120-4015-99、ファックスは01538-8-2529です。

●中標津「三友牧場」の農家チーズがおいしい!

 5月末に中標津「牧童クラブ」の乗馬イベントに参加した機会に、現地に半定住する作家の佐々木譲さんの案内で「三友牧場」を経営する三友盛行さんを訪ねました。三友さんは1945年東京浅草生まれながら68年に奥さんと2人でこの地に入植、いろいろ苦労を重ねながら「マイペース酪農」(三友さんの著書名、00年農文協刊)の経営手法というよりも農家としての生き方そのものを確立し、根釧を中心とする北海道の酪農家に大きな影響を与えてきた指導者です。一昨年までは中標津農協長を務め、いまは町議にもなっています。

 これまでの酪農が、国や農協の言うがままに、徒な規模拡大を追い求めて、配合飼料の過剰給餌、生産資材やエネルギーの大量投入、土地の酷使と環境汚染、農家の過重労働と負債増大という悪循環の中で結局は離農者が増えるばかりであったことを根本的に批判して、土が草を生み、草が乳牛を育て、乳牛が乳を産むのであって、農民が出来るのはその風土の自然力がフルに発揮されるよう「促す」ことだけだという考えに立って、牛の糞尿を活かした有機肥料を施した草地1ヘクタール当たり成牛1頭の「適正規模」経営を心がければ、配合飼料や機材も無闇に買わなくて済むし、そのための借金を抱えることもないし、何よりも農民自身が、朝は気に入りのカップで紅茶を楽しんでから作業にかかり、夕方の搾乳は明るい内に終えて夜は買物に出かけたり音楽を楽しんだりするゆとりを持つことも出来ると提唱しています。

 そうした中で4年前からは奥さんが中心になって「農家チーズをつくる会」が生まれ、今では牧場内に「チーズ館」も出来て、搾りたての牛乳を用いた「山のチーズ」「牧場のチーズ」「グランド・マ・チーズ」など、工場チーズでは味わうことのできない素朴で柔らかな味を創り出して大好評。私も最近はこれとウズベキスタン・ワインの取り合わせを楽しんでいます。三友牧場は常時、電話・ファックスでの注文を受け付けているので、皆様も是非お試し下さい。電話&ファックスは01537-3-3986です。 

●日本は年間300億トンの水を輸入している?

 日本は、都市用水を年間300億トン、農業用水を同600億トンを使っていますが、それ以外に同300億トンの水を輸入している──と水資源開発公団の「水レター」No.13が書いています。「エビアン」とかミネラル・ウォーターをそんなに買っているのか!と思ったらどうではなくて、日本が輸入している大量の穀物を栽培するのに輸入先の現地で必要な潅漑用水がその規模になるとのこと。今年はこの日照りで渇水が心配ですが、それでも日本は「水の国」でほとんど水がなくなるということはなく、「余所の国は、地下水障害とか、大変だなあ」などと気楽に考えています。しかし、それだけの穀物を輸入するということは、そのぶん他国の水資源を奪っていることになるわけで、自分のこととしてその痛みを引き受けなければなりません。

 2003年3月には、今世紀最初の、アジア最初の「世界水フォーラム」が琵琶湖・淀川水域で開催され、各国から5000人以上の専門家・関係者が集まって世界の水問題を議論します。

●酢についてお勉強してしまった!

 私が常用しているお酢は、いつも知人から贈って貰っている宮崎県国富町・大山食品のヤマダイ印「黒玄米酢」で、これは無農薬有機栽培による玄米と黒麹のみを使って、昔ながらの屋外でのカメ仕込みで約半年間寝かせた純天然の醸造酢で、なかなかの逸品です。もちろんアルコール、酒粕、塩、甘味、着色剤、保存料など一切の添加物は入っていません。毎朝、小さじ1杯をコップ1杯の水で薄めて飲むと、夏バテ防止にも効き目があるようです。

 世の中にはいろいろな酢が出回っていて、例えば「純米酢」は、吟醸酒と同様、米を精白して中心部分に近いところだけを使ったもので、これがいいとする人の説では、米の外皮に近い部分には金属イオンや重金属イオンが含まれていて、それによって発酵が速く進んで雑味となるからだと言います。しかし大山食品に言わせると、玄米酢は白米やその他の穀物を使ったものと比べて「玄米の胚芽や表皮等の持つすばらしい成分が酢の中に溶け込んで、特有の香りとコクを持っている」わけで、これは単に香りやコクだけではなくて、胚芽や表皮に多く含まれるビタミンやミネラルはじめ多様な成分をムダにしないで酢の中に取り込むという意味で正しいのではないでしょうか。

 それでも「純米酢」はまだマシで、ただ「米酢」とあるものは、1リットルに対して米40グラムを使用すればそう表示できるので、コーンなど他の穀物を原料として混ぜたり、アルコールを添加したりしています。さらに「米」とも書いていないただの「酢」は、小麦、コーン、米粉、酒粕などのどれかもしくはいくつかを原料として、それを糖化・発酵させたものにアルコールを添加してさらに酢酸発酵させたもので、ほとんどの大量生産品はこれです。最も良心的な場合でも、1%程度の食塩を加えることで開栓後に雑菌が入っても増殖を抑えるようにして、保存料の添加を避けていますが、その食塩も加えない方がいいというのが大山食品の立場。たいていは保存料も甘味剤も着色剤もたっぷり入っていると考えた方がいいでしょう。

 また業務用などに使われる合成酢は、穀物酢を4割以上使って、残りは化学的に合成された氷酢酸を水に溶いた酸っぱいだけの液を混ぜたもので、まったくのマガイモノです。おいしくて身体にいいお酢を手に入れるのも簡単なことではないということです。なお、大山食品の製品を試してみたい方は0985-75-2274へお電話を。

●アサリについてお勉強してしまった!

 アサリの旬は3〜5月で、やや時期外れの話題ですが、日本で出回っているアサリの95%は「畜養もの」と言って、中国から貝を輸入してプールのような畜養場で温度や水質を管理して育てたものだから、季節に関係なく市場に出ます。残り5%が地物で、主力は北海道産。われわれ東京ッ子が子供のころに毎朝天秤棒を担いだおじさんが「アッサリー、シッジミー」と売りに来た江戸前のアサリは今や絶滅寸前になっています。江戸前は小振りで貝殻の白と黒の模様がはっきりしているのに対し、中国産はやや大きめで色の境目が曖昧、北海道産はずっと大粒で色の境目がさらに曖昧で全体にグレーがかっているので、比べれば見た目でありありと区別がつきます。以上、『ビッグコミック』好評連載中の「築地魚河岸三代目」からの受け売りです。

 私が久里浜からフェリーに乗って鴨川に行くときは、必ず浜金谷の港のすぐ前にある魚屋さんに寄りますが、そこではよく江戸前のアサリを売っています。浜金谷が江戸前なのかという方もあるかもしれませんが、江戸前とは東京都の沿岸ということではなく、東京湾の内湾ということです。

●「恵比須の郷」のホームページがすごい!

 『現代農業増刊』の甲斐良治編集長からのお知らせによると、岐阜県飛弾地方の古川町・笹が洞地区のたった32戸の集落が、住民全員参加による自治組織の運営に取り組みつつ、「田舎暮らし」「帰農」の呼びかけを発していて、このほどその活動を余すところなく紹介する抜群のホームページ「恵比須の郷」を開設しました(http://www6.plala.or.jp/ebisunosato/)。以前に本通信で報告した大分県竹田市九重野地区、『現代農業増刊』増刊「地元学とは何か」に紹介されている三重県飯高町波瀬地区など、あちこちで地区レベルから農村を再生させようとするたくましい動きが始まっていることに注目したいと思います。▲