鉄と鋼

  ■製鉄
  ■たたら製鉄
  ■日本刀
  ■庖丁
  ■安来鋼

■製鉄

《精錬》

 鉄を作るための原料である鉄鉱石や砂鉄は、鉄Feと酸素Oの化合物(酸化鉄)として存在しているので、炭素Cのような酸素と結合しやすい元素を還元剤に用いて1500度程度の高温で反応させて鉄を分離させ銑鉄を作る。これが製錬工程で、近代的製鉄法では高炉によって行う。銑鉄は、最初に30%(重量当たり=以下同じ)含まれていた酸素が0.0005%にまで減って所期の目的を達することが出来る反面で、今度は還元用に使った炭素が4〜5%溶け込んでしまい、またそのほかに少量のケイ素Si、マンガンMn、リンP、硫黄Sなどの不純物を含んでいて、硬いけれどももろく、そのままでは質の悪い鋳物に使うしかない。

《製鋼》

 刃物や構造材など強度が必要な製品にするには、炭素をはじめケイ素、リン、硫黄などを減らさなければならず、そのために再度、酸化精錬して溶鋼を作る。これが製鋼工程で、今では転炉・平炉によって行う。溶鋼は、酸素が再び0.05%まで増えているので、炉の中での複雑な調整や取鍋に受けた後の操作を通じて、使用目的に応じて再々度、酸素を減らし、同時に炭素はじめ他の元素を調節し、あるいはニッケルNi、クロムCr、タングステンW、モリブデンMoその他の元素を人為的に加えたりして、鋼塊にする。

《軟鉄・鋼・鋳鉄》
 実用材料としての鉄・鋼は、主に炭素含有量によって分類される。炭素含有量が0.08〜2.0%が鋼で、それ以下は鍛鉄または軟鉄と呼ばれ、柔らかく、焼き入れしても硬化しない。それ以上が銑鉄または鋳鉄で、硬く脆い。ある。また鋼の中では、ニッケル、クロムなどの合金元素を加えていないものを普通鋼または炭素鋼、加えたものを合金鋼または特殊鋼と呼ぶ。ステンレス鋼は、鋼の錆びやすい欠点を改善するため、クロムを12%以上加え、さらに必要に応じてニッケル、モリブデンなどを配合した合金鋼で、耐蝕性だけでなく、非常に硬く、耐摩耗性に優れている。

《鋼種》

 ナイフによく使われる鋼の中では、「440-C」はクロムが16〜18%と、目一杯に近く加えてあるもので、耐蝕性に優れているがその分焼き入れ硬度はやや低いので、例えばダイバー用のナイフに向いている。「D-2」はクロムが11.5%でかなり少なく耐蝕性は低いが、その代わりバナジウムVを0.9%加えて耐摩耗性を上げている。「CV-134」は炭素を2.0〜2.3%と限界まで増やし、その代わりバナジウムを3.2〜4.0%とやたら増やしたもので硬度は最も高い。「154CM」は、飛行機のベアリングに使われていたものをラブレスがナイフ鋼に利用したことから広がったもので、クロムは14〜14.5%と中庸だが、モリブデンが4.0%で珍しく多い。モリブデンは少量加えると焼き入れ性、耐摩耗性、靱性を増すということで、どの鋼種にも1%未満入っているが、4.0%も入っているのはこれと「ATS-34」だけである。ATS-34は日立金属が開発して広く使われているナイフ材で、154CMと組成はほとんど似ている(炭素が154の1.05%に対しATSは0.95%とやや少ない)。

■たたら製鉄

《玉鋼》

 日本では古来、「たたら」製鉄法によって良質な砂鉄から「玉鋼(タマハガネ)」と呼ばれる強靱な鋼を造り、日本刀や庖丁に鍛造した。たたらは「鑪」「踏鞴」「蹈鞴」と書き(ワープロ辞書で3つとも出てくる)、その語源はよくわからないが、一説には製鉄技術にとりわけ優れた大陸の騎馬民族「タタール」に因むというから何やらロマンティックである。[→鉄の歴史・抄]

 たたらは、粘土で作った角形の炉のことで、木炭をくべて下から風を送って燃やし、十分に温度を上げてから木炭と砂鉄を交互に層をなすように投入して、3昼夜ほど燃やし続けて砂鉄を還元する。焼き上がると炉を壊して粗製鉄の塊(ケラ=金へんに母と書く)を取り出し、それを拳大に砕いてその断面を見て玉鋼と銑(ズク=銑鉄)とカラミ(金へんに暖のつくりを書く=鉱滓=スラグ)を区別する。現代の高炉と比べて低い温度でじっくり焼くため、リン・硫黄などの不純物の還元が進まず、酸素や窒素などのガスも溶け込みにくいので、出来た玉鋼は不純物の含有量が極めて少なく、炭素量が1%程度で、日本刀の刃に好適な硬さと粘りけを持つ純良な品質となる。

《砂鉄》

 材料となる砂鉄は、花崗岩や閃緑岩に1〜2%程度含まれている鉄分が風化作用によって母岩から分離したもので、大別すると「真砂砂鉄」と「赤目砂鉄」の2種類がある。真砂砂鉄は花崗岩を母岩とし、チタン含有量が少なく溶解温度が高いのに対して、赤目砂鉄は閃緑岩を母岩とし、チタンを多く含み融解温度は低くて炭素を良く取り込む。玉鋼になるのは真砂砂鉄で、もう一方の赤目砂鉄は銃鉄として使われた。

 日本の製鉄がいつ頃から始まったかは明らかでないが、7〜8世紀には全国各地で盛んに行われた。ところが、砂鉄製鉄は原料となる砂鉄のチタン含有量によって経済性・技術性に大きな違いがあるため、近世になるとチタン含有量が少ない砂鉄を産する島根、広島など中国山陰地方が産地として優位を占めるようになり、17世紀末には天秤鞴(てんびんふいご)が発明され、18世紀後半には高殿鑪(たかどのたたら)と呼ばれる大がかりな炉が作られるようになるなどの技術革新もあって、同地方が全国の需要を一手に賄うようになった。

 たたら製鉄は、高炉による近代製鉄が始まってからも大正年間まで続けられ、その後第2次大戦中に苦し紛れでやや盛んになったが、戦後はほとんど絶滅した。しかし70年代から日本鉄鋼協会や日本美術剣保存協会などが技術保存に取り組んでいる。

[参考]

◆日立金属・たたら(http://www.hitachi-metals.co.jp/tatara/index.htm
◆安来市・和鋼博物館(http://fish.miracle.ne.jp/suga/riz1.html
◆島根県吉田村役場・鉄の歴史村(http://www.web-sanin.co.jp/local/yoshida/index.htm
◆東芝機械・鉄の馬(http://www.toshiba-machine.co.jp/teatime/iron/INDEX.HTML

■日本刀

《歴史》

 日本でいつ頃から刀が造られるようになったかは定かでないが、日本独特の反りのある刀が造られるようになったのは平安時代に入ってからで、それが鎌倉武家政治の時代に全盛を迎え、各地に数多くの名工が排出した。

 明治9年(1876年)の廃刀令で刀工はほとんど壊滅するが、日本刀を好んだ明治天皇の意向で1900年に「刀剣会」が設置されて刀工・研師の養成が始まり、また帝室お抱えの刀工による宮中御用の刀剣の鍛造も始まった。1918年に東京帝大に日本刀研究室が設けられ、砂鉄、日本刀の組成、鍛造方法、切れ味などの科学的な研究が初めて組織的に行われた。

 第2次大戦後、GHQによって軍刀は武器として没収されたものの、鑑賞に足る美術品としての刀剣はその対象とならなかったので生き残った。その後しばらく刀剣の製造は禁じられていたが、昭和33年(1958年)の銃砲刀剣類所持取締法第18条の二で「美術品として価値のある刀剣類を製作しようとする者は、製作しようとする刀剣類ごとに、文化庁長官の承認を受けなければならない」ことになり、承認を得れば製造できるようになった。

《工程》

 武器としての日本刀は、よく切れることが第一だが、同時に折れたり曲がったりしない強靱さを持たなければならない。そのため、軟鉄を「心鉄」として芯に入れ、その外側を「皮金」と呼ぶ鋼で包み、さらに刃先の部分には一層硬い鋼を加えるという方法で造る。軟鉄と鋼の組み合わせ方には、「甲伏(こうぶせ)」「捲鍛(まくりきたえ)」「本三枚」「四方詰」などがある。

「甲伏」はU字型の皮鉄の中に長方形の心鉄の塊を挟み込み、「捲鍛」はその時に皮金を下にして型の上に置き槌で打ち込んで捲るようにする。「本三枚」は2枚の皮の間に、刃側に鋼を、棟側に心鉄を挟み、「四方詰」はその時に鋼、心鉄、棟鉄の3種を挟む。捲鍛の場合の手順は……

(1)皮金──玉鋼の小さな塊を熱して小片を何枚も造り、それらを重ねて1枚とし、それを打ち伸ばしては鏨(ただね)で折り目を入れて折り返すことを縦横交互に20回以上繰り返す。そうすることで不純物を取り去り、地金を炭素量0.6%程度で均質にし、折り重ねることによって弾力性が増す。

(2)心鉄──軟鉄と玉鋼を2:1程度に混ぜて同様に打ち伸ばし、10回程度折り重ねて炭素量0.3%程度に鍛える。

(3)造刀──皮金の上に心鉄を重ね、熱して癒着させ、皮金を下に凹状の型の上で槌で叩き、皮金に心鉄を押し込んで捲り込む。それを打ち伸ばして長方形の棒状に素延(すのべ)し、それをさらに熱しつつ刃側を打って薄くし、大体の形を決める。鑢(やすり)などで荒仕上げして荒砥石で研ぐ。

(4)焼入──刀身に焼刃土(やきばつち、すなわち耐火性粘土に松炭や砥石の粉を練り込んだもの)を、刃部は薄めに、地は厚めに、塗って、乾いてから750〜850度で焼き入れし、微温水で急冷する。刃部は焼きが強く入った上、急激に冷まされるので硬くなり、地は焼きが弱く緩やかに冷えるので柔らかくなる。土の塗り方と火や水の温度で、その硬軟のバランスを調整し、また刃と地の間に生まれる「沸(にえ)」「匂(におい)」と呼ばれる大小の粒子の出具合をコントロールし、それを研磨することで「刃文」と呼ばれるいろいろな模様を浮き立たせることが、刀匠の腕の見せ所となる。

(5)焼戻──反りなどの形を整えて、再び150〜200度の火に入れて焼き戻し、全体に柔軟性を持たせる。

(6)研磨──まず「下地研」で、目の荒い砥石を7種類ほど使って縦横斜めに角度を変えながら全体の形を整える。次に「仕上げ」で、刃と地を別の砥石で艶出しし、椿油に鉱物粉を混ぜたものを塗って糸綿で擦り、刃と地を研ぎ上げる。さらに「帽子」と呼ばれる切先部分を仕上げする。

[参考]

◆日本美術刀剣保存協会・刀剣博物館(http://www007.upp.so-net.ne.jp/nbthk-tk/token_hakubutsukan.htm
◆村松茂・日本刀と武器・武具(http://www2d.biglobe.ne.jp/~yamaka/

 
■庖丁

《歴史》

 最古の現存する庖丁は正倉院にある日本刀型のもので、全体の長さ38センチと41センチ、刃渡り25〜26センチの2本である。単一の鋼で造り、焼き入れの技術で刃側を硬く、地を柔らかくした「本焼き」によるものとされる。後に次第に幅が広くなるものの、1000年近くはこの日本刀型が使われていて、江戸中期から後期にかけて、堺を中心として今日の料理人が駆使するような薄刃、出刃、蛸引(刺身)、柳刃、鰻裂など目的に応じたいろいろな包丁が、しかも日本刀と同じ硬軟の鉄材を組み合わせた鍛造法が採られるようになったらしい。

《片刃と両刃》

 和包丁には、表も裏もほぼ同じ角度で研いである両刃=諸刃(もろは)と、片面が平面もしくは凹面でもう片面が凸面の片刃(かたば)とがある。片刃は日本にしかない刃物の作り方で、出刃、刺身包丁(関西では柳刃、関東では蛸引き)、薄刃などプロが使う包丁のほとんどがこれである。切り下ろした時に刃先がやや左に切れ込むので、切り離れがよく、断面が美しくなる。左右を同じように切ることが必要な牛刀、鮨切包丁、中華包丁などはプロでも両刃を使う。家庭の菜切包丁や文化包丁は両刃である。

《本焼きと合わせ》

 製法には、単一の鋼で造る「本焼き」と、日本刀のように硬軟の鉄材を抱き合わせる「合わせ」がある。本焼きは、炭素含有量0.9〜1.2%の鋼を用い、刃の幅の真ん中あたりから刃側に焼きを入れて硬くし、峰側には焼きを入れずに柔らかさを残す。このように、日本刀の焼き入れと同様、土の塗り方を微妙に加減するので、「日本刀と同じ」という意味で本焼きと呼ばれるようになったと言われる。ちなみに、洋式の包丁やナイフも単一の鋼で作るが、これは型抜きして切り出した鋼材を(土塗りで焼き加減を変えることをしないで)丸ごと真っ赤に書き入れるので、本焼きとは言わず「丸焼き」と言う。本焼きは、ほとんどは片刃の高級和包丁として造られる。合わせと違って材料を貼り合わせていないので、出来上がってからの狂いが少なく、また多量の素材を切っても切れ味が低下しにくいメリットがある反面、衝撃に弱くて欠けたり折れたりしやすい。安来白紙鋼のような焼き入れ性の悪い高級な鋼を使って手間をかけて打つので、価格は合わせの数倍も高い。

 合わせは、日本刀と同じく軟鉄と鋼を貼り合わせる。そのやり方には、両刃の場合、2枚の軟鉄の間に鋼を挟む「三枚打ち」、逆U字型の軟鉄に鋼を包み込む「割り込み」があり、片刃の場合は、軟鉄の片側に鋼を貼り付ける「付け鋼」である。硬くて脆い鋼を粘りのある軟鉄で包むので、丈夫で、素人にも扱いやすいし、価格も手ごろである。反面、錆びやすいので手入れが必要だし、長年使うと歪みが生じることがある。

《工程》

 合わせ庖丁の工程は次の通り。今では、地金と鋼を予め接合させた複合材を使って火造りを省略する場合が多い。

(1)火造り──軟鉄の地金を熱してベルトハンマーで叩き、接着剤として硼砂と酸化鉄粉をひり欠けて鋼の小片を乗せ(片刃の場合──諸刃は軟鉄の角材に鏨で割れ目を入れて鋼を挿入する)、900度前後で加熱して叩いて圧着させる。切り落として叩き伸ばし、大体の形を作る。

(2)荒仕上げ──グラインダーで形を整える。

(3)焼き入れ──焼刃土を塗って乾燥させてから、780度程度で焼き、水に入れて急冷して硬度を高める。

(4)焼き戻し──焼き入れした鋼は脆いので、再び150〜200度くらいの低温の炉もしくは油の中に入れ、空気中でゆっくり冷ますと、硬度はやや落ちるが粘り強さが出る。

(5)研磨──荒めの砥石から順に細かい砥石を使って刃を研ぎ出す。

 洋庖丁の場合は、今では鋼材を切断して鍛造するところから行う方法はほとんど用いられず、鋼材を型抜きして、炭素鋼は800度、ステンレス鋼は1020〜1050度で焼き入れして油に入れて冷やし、140〜180度の油で焼き戻しし、自動研削機で整形してサンドベルトで刃を付ける。

[参考]

●柴田書店編集部編『包丁と砥石』(柴田書店、1999年)
●遠藤功『図解「吉兆」仕込み庖丁さばきの極意』(講談社、1998年)
◆築地の刃物店「子の日」の「庖丁Q&A」(http://www.nenohi.co.jp/q&a/q&a.htm
◆堺の刃物店「一文字厨器」の「包丁の話」(http://www.ichimonji.co.jp/hanasi/index.html

■安来鋼

 刃物の素材というのはなかなか難しくて、硬度が高くなければ切れ味が鋭くならないし、耐摩耗性がなければいわゆる“刃持ち”が悪くなって長持ちしない。炭素の含有量を多くして焼き入れを強くすれば硬度と耐摩耗性は上がるが、上げすぎると今度は靱性=耐衝撃性が弱くなって粘りがなく脆くなる。もう1つは耐蝕性で、クロムの含有量を増やして13%以上にするとステンレス鋼となってほとんど錆びず、それ未満だとセミステンレス鋼で錆びにくくなるが、そのクロムが硬度を上げることを妨げる。クロムが全く入っていないのが炭素鋼で、これはすぐに錆びる。つまり、硬度・耐摩耗性と靱性と防蝕性が3すくみになっていて、それを何とか折り合いを付けるために、他にシリコン、マンガン、リン、バナジウムなどをブレンドして理想的な鋼材を作ろうとする試みが重ねられてきたが、しょせん単一の鋼材ではこの3次元方程式の解を見いだすことは出来ないだろう。いまナイフ作りに最も多用される日立金属の「ATS-34」という鋼材は、比較的その3次元のバランスがとれているとされている。

 日本式の硬度の異なる鉄を組み合わせる方法は、硬度・耐摩耗性と靱性との矛盾を解決する昔の人の知恵で、それによって和式鍛造品は洋式ナイフに比べて格段の切れ味を持ちながら衝撃に強く折れにくい。しかし防蝕性の問題まで同時に解決することは出来ず、放っておいても錆が出やすいので、自分で研ぎを楽しむ風がないと使いこなすことが出来ない。

 かつてのたたら製鉄による玉鋼の伝統を引き継いで、山陰地方の砂鉄で鋼材を生産し、国内の高級刃物用の鋼の8割ほどを供給しているだけでなく、海外からもその性能を高く評価されているのが、日立金属安来工場で、その製品は「安来鋼(ヤスキハガネ)」と呼ばれる。主に次のような種類がある。

《SK材=炭素工具鋼》──リン・硫黄などの不純物がやや多く、従って焼き入れしやすいので、低価格の庖丁や全鋼の洋庖丁などに広く用いられている。

《黄紙(キガミ)》──半分を砂鉄系の原料にして、SK材に比べて不純物を減らした炭素鋼が黄紙2号、それよりさらに炭素を少なくして靱性を増したのが黄紙3号や黄紙鋸材である。

《白紙(シロガミ》──全部を砂鉄系の原料から作り、さらに不純物を少なくした炭素鋼が白紙2号で、さらに炭素量を増やした1号と、炭素量を減らした3号と鋸材がある。白紙は、天然砥石で研ぐと最高に鋭利な刃が得られるということで珍重されるが、炭素鋼は不純物が少ないほど焼き入れの温度管理が難しく、熟練が必要になる。

《青紙(アオガミ》──白紙にクロム(靱性と焼き入れ性を増す)とタングステン(耐摩耗性を増す)を加えたセミステンレス鋼が青紙2号で、炭素量を増やした1号、それらの添加物の量を増やして特殊な方法で溶解させた青紙スーパーもある。クロムやタングステンの他に金属炭化物も混じっているので硬度が高く刃持ちがよい。黄紙や白紙に比べて価格は高く、高級ナイフなどに用いられる。

《銀シリーズ》──クロムを12%以上加えたステンレス鋼で、銀5はカミソリ替刃材として世界中で広く使われる。銀1はクロムが高く、モリブデンを添加しているため耐食性に優れている。銀3は炭素鋼並みの硬さと切れ味を得られる。

《ATS-34》──銀3よりクロムを増やし、モリブデンを添加したナイフ用鋼材で、硬さ、耐食性、耐摩耗性、靱性などのト−タルバランスに優れているとして世界的な評価を得ている。それよりもさらに炭素もクロムも多いZPD-183もある。

[参考]
◆日立金属・高級刃物鋼(http://www.hitachi-metals.co.jp/prod/prod09/p09_13.html

←目次に戻る     ↑最初に帰る