このサイトについて


 極私的な高野孟的ワンダーランドへようこそ。

 このサイトは、私がずっと以前から気儘に綴っている個人的な発信源です。06年に今の《ザ・ジャーナル》の前身であるブログサイト《ざ・こもんず》を始 めるに当たって、インサイダー編集長及びブログサイト主宰者としての公式の活動の中心をそちらに移し、「高野孟の極私的情報曼荼羅」という同名のブログを開設することになったので、こちらは過去の記事を保存しつつ、必要なところ だけ更新を続ける個人サイトとして残し、そのために「&あーかいぶ」という断りを付することにしました。

 現在、私のジャーナリストとしての日々の営みは週刊メルマガ『高野孟のザ・ジャーナル』に集約されているので、そちらをご購読頂ければ幸いです。とはいえ、例えば「講演 についての頻繁問答」や「プロフィル&顔写真ダウンロード」などは定期的に更新しているので、その関係者の方はこちらを時折チェックして頂くようお願いし ます。

 私は確かにジャーナリストですが、それは私が持っているアイデンティティの1つにすぎません。私は一個人としても一市民としても、様々な仕方で世の中と 関わっているわけで、そのような関わりの総和が実は私という人間の実体をなしていると言えるでしょう。そのどの活動領域にも面白いことがたくさんあり、 従って人に伝えたいこと、表現したいこともそれぞれにたくさんあって、それがこのサイトに雑然と投げ込まれているのです。

 下図は、私が大学の教員を務めていた時に自己紹介を兼ねて学生たちに配付していた「私とは誰か?」の心象曼荼羅です。手法としてはトニー・ブザン博士 の「マインドマップ」を模倣していますが、博士のそれはなかなか厳密な定義やルールがあって面倒なので、私はその発想だけ借りて、カタカナではなく漢字で「心象曼 荼羅」と称して、学生たちにもこれに準じて「自分とは誰か?」を描いて持ってくることを毎年の最初の課題としていました。描いてみると絵がスカスカで、自分が 世の中といかに貧しい関係しか結んでいないのかを思い知って愕然としたという学生が多いのですが、皆さんも是非自分で試してみてはいかがでしょう か。

 やり方は簡単で、A4の紙を横に置いて、中央にテーマを据えて、12時の方向から時計回りにいろいろな要素を芋づる式に描き込んでいけばいいのです。気 持にゆとりがある夜に、ウィスキーのグラスでも用意して、まずは大雑把な下絵を描いてみて、それから清書をします。線の太さを変えたり色を使ったり絵を添 えたりすることは重要で、なぜならこのやり方が左脳と右脳の連絡をよくして、自分自身についての固定観念を打ち砕いて想像力を大きく拡張するところに狙い があるからです。



高野曼荼羅
  私が人は皆マルチ・アイデンティティであるということに気づいたのは、30年ほど前に西ドイツと呼ばれていた頃のドイツを取材で訪れて、日曜日に知人のドイツ 人記者の自宅に招かれた時のことでした。車を降りてアプローチを上がっていくと、生け垣の向こうで隣家のご主人が庭の草刈りをしていて、知人が「こんにちわ。 こちらは日本から来たジャーナリストで…」と私を紹介すると、彼は人なつっこい笑い顔で「そうですか。私はこの町の少年サッカーの監督をやっていまして…」 と言う。私は、ふうん、もうリタイアして暇なオッさんなのかなくらいに思って「ああそうですか」というような軽い反応をした。家に入ると知人が、「お前 ね、ドイツで町の少年サッカーの監督を長年やっている人は、市長の次くらいに人びとから尊敬されているんだ。『ホーッ、少年サッカーの監督をしていらっしゃるん ですか』と感心しないと駄目なんだ」と言う。彼は言葉を継いで、「彼は或るドイツ有数の製薬会社の副社長でもあり、それだけでなく、ベトナム戦争孤児を養 子として引き取って養育する全欧的な市民運動の指導者で、現に隣家にはベトナム人の子供が2人いて小学校に通っている」と…。ヒエーッ! これが日本人 だったら、まず有名会社の「副社長」の肩書きを言って、名刺でも出すところだろう。彼の心中では、副社長は2番目か3番目のアイデンティティにすぎず、そ れよりも「少年サッカーの監督」のほうが上位のアイデンティティなのだ。日本人は「社畜」という言い方もあるように、まずは会社が太陽で、自分はその周り を回っている月のようなものにすぎず、太陽が陰れば自分では光らない。しかし彼の国では個々人が太陽で、その周りに会社、少年サッカーの監督、全欧的孤児救 済ボランティア、家族等々のアイデンティティすなわち活動領域が適切なバランスで配置されていて、時間とエネルギーを巧みに配分しながらそれらを泳ぎ回っ て、その全体的なアレンジの巧みさがつまりは彼の「人生」なのだ。参ったなあ…と。成熟先進国の市民社会とはこういうものか…と。

 そんなことから始まった私自身の模索の一部が、このサイトに反映されているとお考え下さい。▲